塗装を通じて、進化する環境づくり ~計画をして、実現に向けやり続ける~
斗光 健一 氏
株式会社トコウ
代表取締役
斗光 健一 氏(三多摩支部)
【会社概要】
設 立 平成 20 年 1 月
従業員数 45 名
事業内容 各種金属の焼付塗装・粉体塗装、特殊塗装・木
工塗装・建築塗装、製作事業(設計・製作・塗装 )
所在地 (本社) 〒358-0035 埼玉県入間市中神991
H P https://toko-toso.com/
挨拶から始まる変化
東京同友会のなにげない会話で、会員同士の社内見学など交流談を耳にすることが多々ある。たとえば「社員さん達が挨拶をしてくれて感心した」などから始まり、それぞれの会員企業の印象が語られる。そして株式会社トコウではこのようなエピソードを耳にした。「猛暑の中、トコウさんの工場見学をしていたら、社員さんがマスクを取って汗だくになりながら笑顔で挨拶をしてくれたんです」。「で、私も新鮮な驚きがあって、思わずその社員さんに、仕事は楽しいですか?って聞いちゃったんです。そしたら “めちゃ楽しいです”ってまた満面の笑顔で返してくれて」と。
このエピソードを斗光健一氏に尋ねると「塗装が好きな人間が多いんですよね。あと社員同士、仲が良い。有難いですね」と、これまた屈託のない笑顔が返ってきた。しかし、斗光氏の仕事観および経営者としての歩みを伺うと、
変化までの道のりは相当なものであったことが分かる。
まず社員さんが先んじてしてくれる挨拶。これをとっても、ほんの数年前までのトコウは挨拶の行き交いがない会社であったそうだ。「挨拶で会社は変わります。挨拶ができないと人間関係の構築はできませんから」と斗光氏は語る。挨拶の語源に一挨一拶(いちあいいっさつ)という禅語がある。お互いが歩み出て確かめ合い、磨き合う意味合いだ。現在、同社では挨拶を最も大切にしており、一歩押し広げて、会議も重視しているという。「世の中は効率を求めて会議を縮小する傾向にありますが、顔を合わせる場は大切。楽しい職場づくりを目指すためにも欠かせません」。輪は広がり、毎月なにがしかのイベントを社員さんが企画をしてくれるようになった。また、職人さんとパートさんを含めて社内には個人用のデスクも完備。ひとり一人の居場所をつくりたいという斗光氏の想いの表れである。
東京同友会との出会い
株式会社トコウの設立は平成20年1月。父君も塗装業を営んでおり、斗光氏も家業の手伝いをしていた。「北海道に憧れがあり、学生時代は函館で過ごしました。就職はイベント企画に携わりたいと考えていて、イベント企画会社へ。その後、仙台支店に勤務。しかし平成12年に父が病に伏し、両親との話し合いを経て家業に入ります。父と母の苦労も見てきましたから」。しかし、塗装職人として入社をした斗光氏。職人がひとり会社に増えただけで、会社のことも分からず、自身の存在意義に悩み、「なんで塗装屋なんだ。他の業界なら俺はもっとできる。業界もイヤ、塗装もイヤって」と腐る日々だったという。
その後、㈱トコウを設立するも光が見えない中、別経営者の団体で谷口栄美子さん(三多摩支部)と出会う。会社の悩みを谷口さんに相談をし、同友会を勧められた。また「なんで、谷口さんはいつも元気なんだろう、っていう素朴な興味もあったんです。で、紹介をいただいたならば会社づくりをやらなきゃと決心をしました」と斗光氏。そして成文化セミナーを受講し、会社づくりがスタートをすることとなる。
社員の幸せを目的に
「成文化セミナー受講中、真に考え抜いたと思います。自分のこと、会社のことを。すると自ずと、社員の幸せを目的にする経営が浮かんできたのです」と斗光氏。「まずは環境を整えることを考え始め、挨拶を大事に。そして工場の設備投資や新設を計画しました」。従前は工業塗装を主としていた同社だが、金属塗装から始まり、木工塗装、樹脂塗装、建築塗装、特殊塗装と対応力を広げてきた。一般的に塗装業はそれぞれ専門分野にとどまりがちだが、ワンストップで多種多様な受け入れをできる会社は少ないという。さらに「設備投資をすれば機械的な対応幅は広がるのですが、それでは他社との差別化ができない。トコウではスタッフの知識と技術を合わせることによって独自性を出しています」。「幸い職人同士も仲が良いので、ベテランと若手による技術力と柔軟さの相乗効果が出ています」と嬉しそうに語る。「それもこれも同友会会員さんから教えていただいたことです」。
「コロナ前までは環境が整いはじめ、少し安心をしていたんです。でも、やっぱり影響は受けました。それでも過去のような苦しさがなかったのはヴィジョンや指針などの計画を社内で共有していたからです。また、新たな商機も見えてきました。業界にもまだまだ未来があると思います。
苦労しないと考えないことって、ありますね」と斗光氏。
「進化する塗装屋。進化するには様々な意味合いがあります。現場にいるみんなと常に先を見続け、歩んでいきます」と温かく、芯のある声で語ってくれた。