誰かを励ますことを、ずっとしたい ~看板ができること、私個人もできること~
伊藤 博通 氏(新宿支部)
有限会社ハートランドプロジェクト
代表取締役
伊藤 博通 氏(新宿支部)
【会社概要】
創 業 平成7 年 5 月
従業員数 4人
事業内容 店舗ディスプレイ全般/ サイン・看板のデザイン制作施工
店舗の内装・外装工事の企画・設計・施工・ダイノック
展示会・イベント・ディスプレイ等の企画デザイン・制作/イラスト
所在地 東京都新宿区余丁町14-5 ミュージカルドッグビル2F
H P https://www.heartland-pjt.com/
コロナ禍、花が咲く
2020年8月、東京は新宿。余丁町(曙橋)に笑顔の花が咲いていた。商店街の通りの街頭フラッグが小学生の描いたさまざまな絵で彩られていたのである。この環境を整えたのが伊藤博通氏であった。
「新宿に住んで32年。会社も新宿に構え、地元に根付くこと、貢献することを考え、動き続けた28年でした」。「そして、コロナ禍。当社は店舗ディスプレイや内装・外装を手掛ける業態のため大打撃を受けました。事務所にてひとり。どうしたものかと悩んでいると、目の前の通りを救急車がサイレンを鳴らし駆け抜けます。この近辺には国際医療センターや東京女子医大があるからです。常日頃、会社でも、家族にも人のために人のためにって言っているけれど、この未曾有の事態で何ができるのだろうと⋮」と手元を見つめ、「そして、ふと、私と自社が出来ることに気が付きます。医療従事者に感謝を伝えるサインや横断幕を出せるのでは、と。さっそくスタッフと一緒に会社に医療従事者にエールを伝えるサインを作り、通りからも見える場所に貼り付けました。そして自宅には横断幕を掲げました」。「有難いことに仕事仲間もエールを送る横断幕を会社に掲げてくれて。それらが実際に医療従事者のみなさんの目に止まっていたということを知らされます。テレビ番組の『情熱大陸』で当時最前線に立っていた医師が話してくださったのです」と振り返る。「誰かを励ましたい。自社のサインはそれができる媒体ではと勇気が湧いてきました」。
「同じくして気になったのは小学生のことでした。私の子どもたちも近隣の小学校にお世話になりました。なにかお返しはできないかと。そうして誕生したのが余丁町笑顔プロジェクトでした。小学生に絵を描いてもらい、それを当社の機材で読み取り、フラッグに印刷する。これを商店街の街頭フラッグに備え付ければ、笑顔の輪が広がるのではと思ったのです」と嬉しそうに語る。「プロジェクトは実現し、先生方から聴いた感想にも心が満たされました。子どもたちは最初、遊びながら絵を描いていたそうなのですが、次第に熱気をおびてきたというのです。こんな時期だから美味しいものを食べようという絵のテーマから、海に行きたいというものまで。絵をめくってスキャンするたびに涙をおさえられませんでした。純粋なパワーに溢れていたからです」。
創る喜び、生み出す力。
「当社にはテーマがあります。“創る喜び、生み出す力。”です。成分化セミナーを受講する前から抱き、実践してきた言葉です。悩み続け、いまもその状態ですけれど、コロナ禍で人のもつ力を感じることができた余丁町笑顔プロジェクトだったと感じています」と伊藤氏。「父は商売人で紳士服の洋品店を二軒。そして自宅軒店舗を営んでいました。自宅の店舗をきりもりするのは母です。小学生だった頃のことを。晩御飯の準備が出来ないくらい接客を続けている母に対し、空腹だった私は当てつけるように店舗と自宅を隔てるすりガラスをバンバンと叩いたことがありました。接客を終えた母は鬼の形相。物差しを片手に、ヒロミチー!って背中を叩かれたことがあります。母は仕事をする尊さをそのように教えてくれたのだと思います」と微笑む。「家業を継ごうと動いた時期もあったのですが、音楽やイラストレーションの世界に興味があり。結果、街の中で見つけた看板屋の求人告知を見て、この業界に足を踏み入れます」。「幸い景気のよかった時期でもあり、それはもう寝る暇もないくらい働いていま
した。ただ、節目節目で今のままでよいのかなとふと振り返るタイミングも。そして出会ったのが同友会でした。きっかけは義理の妹のお父さんが愛知同友会に入っており、そのつてで東京足立支部の例会に参加。衝撃と感動のダブルパンチでした」と笑う。「これほど真面目に、でも垣根なく勉強する団体があるんだって素直に思えて」。
「わたしが生まれた60年世代は、何でもあり、何でもやるというオールラウンダーで、今まで通りのことを打破するのが好きでしたね。その気持ちは変わっていませんが、今はめんどくさいオヤジです」と冗談を挟む。「スタッフとは仕事を超えて、趣味の話とかで盛り上がったりする時間も増えました。経営者っていうよりは仕事をするリーダーっていう感覚でしょうか。一緒にやっていて楽しいとかそういう感覚をより大切にしたい。いつも社内に気を配ってくれる奥さんにも感謝。ちょっとイージーに。ジジイなりに楽しんでいきます。ずっとお客さまが求めていることをカタチにし続けていきたい」と笑顔を向けてくれた。