ＪＲ八王子駅北口ロータリーを抜け子安神社の向かいのビルに㈱マイソフトがある。社員の皆さんがパソコンに向かって仕事している奥から、社長の藤田功さんが現れた。

開口一番「私は、八王子で二番目に嫌われています」と一瞬何を言い出されたのかわからず、取材に同行した岡野景子さんや田中勇介さんの顔を見るとニヤニヤしている。どうもこれが藤田さん流の真面目顔の冗談トークのようだ。

㈱マイソフトは、平成２年、大澤徹さん（現会長）が設立した。通信セキュリティの組込み基幹システムを中心に製造、ＡＩ（人工知能）といった分野のシステム設計・開発を行っている。防衛省関係や学校教育といった分野でも幅広く実績を残している。

藤田さんは、北海道網走生まれ、高校の頃から、趣味でコンピュータのソフトウェアを組んでいた。音響系の専門学校に新聞奨学生をしながら通っていたが、バイトが儲かって面白くなって学校に行かなくなったため中退した。地元に帰り海産物問屋等でアルバイトを続けた。その後自衛官に応募して、海上自衛隊横須賀地方総監部に赴任。フリーランスを経て㈱マイソフトに就職する。藤田さんが会社を引き継いで１０年になるという。社長になってからは趣味の自転車、スキーといったスポーツやギターが忙しくてできなくなった。唯一お酒は続いている。一人飲みの時は静かなところで、気の合う仲間と飲むときは、いろいろな場所にチャレンジしていると嬉しそうに答える。これにもまた面白い破天荒なエピソードがありそうだが、深入りはやめておこう。

大澤さんの最初の印象を尋ねると「マジシャンであやしい人だなあ」と。その大澤さんが入会している同友会の印象はどうでしたかとお聞きしたところ、録音しているＩＣレコーダーに顔を寄せて「素敵な人が多いです」と二度繰り返された。いたずらっぽい笑顔。八王子ＩＴ協同組合のリーダーでもあり、市役所の委託事業も請負い、政府調達や中央会からも、受注を開始している。

市況が悪くなり、派遣に出していた社員が戻った頃、助成金申請をして、自律走行無人ボート（海や河川などで、有人ボートでは難しい浅瀬や危険水域の測量ができる）や犬の緑内障を調べるシステムなどを開発した時期もあった。そういったひらめきやヒントを、形にすることが会社の強みとなる。それを藤田さん流に変換すると「最後までやりとげる”根性”」と、かなりユニーク。

取材者の業界でもあるので、「建設業に、ＡＩやＩｏＴを生かすとしたら、どんなことが考えられますか」と聞くと、即座に「コンクリート打設の際のムダな人の動きを
チェックして、それを回避するシステム」を皮切りにいくつもの具体例を話された。
想像力の豊かな人だ。ネタ帳も作っているという。「あとはお金が、用意できればいいのですが、これが一番大変」と語る。

無類のＳＦ小説好きで、この話を始めたら、時間が足りなくなりそうなので、そのお話しは次回に。藤田さんとお話しをしているうちにドラえもんと四次元ポケットが
脳裏に浮かんだ。「二番目に嫌われている」の一番は誰なのか聞きそびれてしまった。こういう人と仕事でも、遊びでもご一緒できると、人生はより豊かで楽しくなるに違いない。シャイな笑顔にまたお会いしたい。