タイトルアイコン

経営者Q&A

社会保険適用拡大:中小企業が知っておくべきポイント(2024年8月)

Q

今年(令和6年)10月から、社会保険適用拡大の対象企業が51 人以上になると聞きました。制度の内容と、今後どのようになっていくか教えてください。

A

現在、対象企業を広げつつある社会保険の適用拡大は、中小企業に大きな影響を与えると予想されます。今回の法改正の背景には、多様化する働き方に対応する
社会保障機能の強化が目的としてあります。これに伴い、特に中小企業にとっては、人件費の増加や、パート社員の働き方の変化などに対し新たな対応策が求められます。
これまでの社会保険適用対象者は、所定労働時間が正社員の3/4 以上の方でした。しかし、令和4年10月からは、被保険者数101人以上の企業で週の所定労働時間が20時間以上かつ、所定内賃金8.8万円以上の社員が加入対象となりました。さらに、令和6 年10 月からは、被保険者数51人以上の企業においても同様の条件が適用されます。今後も適用拡大が続き、50人以下の企業も対象になることが予想されます。
今回対象となる企業は、企業全体(法人番号単位)ですでに社会保険に加入している社員数が51 人以上の会社です。事業場単位ではなく企業単位であり、社会保険加入者数で判断する点に注意しましょう。
月額8.8万円以上の社員が社会保険の対象者となりますが、これは年額にすると105.6万円であり、社会保険の被扶養者の要件(130万円)を下回ります。そのため、現在被扶養者の範囲で働いているパート社員であっても、社会保険に加入する可能性があります。パート社員にとっては、より短時間の労働に切り替えるか、より多くの時間働くことで可処分所得を増やすかの選択を迫られます。
現在の人手不足の中、企業では新たな採用が難しい状況が続いています。これまで扶養の範囲で働いていたパート社員が、社会保険加入をきっかけに労働時間を短くするよりも、より労働時間を長くすることで、会社の戦力不足にならないよう、魅力的な労働条件を提示することが求められます。また、社会保険加入による人件費負担を賄える体制づくりも必要です。具体的には、給与制度の見直しや、働きやすい環境の整備が考えられます。
令和10年には雇用保険の適用条件が週20時間から週10時間に拡大される予定です。その頃には、すべての企業が社会保険適用拡大の対象となる可能性もあります。現在対象外の企業も早期の対策づくりが重要です。中小企業経営者として、今から準備を進め、法改正に対応できる体制を整えていく必要があります。

藤浦隆英(江戸川支部)
社会保険労務士法人レイバーセクション
特定社会保険労務士
TEL :03-3869-8459
HP:http://www.labor-section.jp/
e-mail:takahide0505ls@labor-section.jp

戻るボタン
経営を磨きたい 経営の相談をしたい 交流したい 人を採用したい