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経営者Q&A

株券不発行制度の利用について(2005年2月)

Q

株券がなくなると聞きました。本当でしょうか。

A

確かに、平成16年の商法改正により、会社は定款変更により、株券を発行しない旨の定めをすることができるようになりました(商法227条)。ただ、現行の株券が直ちになくなるわけではありません。また、公開株とそうでない場合とでは、その取り扱いが異なります。
公開会社においては、2009年6月を期限とする一定の日(政令で定められる「一斉移行日」)において、一律に、株券不発行制度を採用する定款変更決議をしたものとみなされることになりました。そして、これまでの「証券保管振替機構(通称ほふり)」による株券を管理に代わって、新しい「株式振替制度」のもとで株式譲渡の管理をすることになります。
これに対して、非公開会社では、株券の廃止を強制されるわけではなく、あくまで定款変更により任意に採用することができるだけです。

Q

中小企業にはどのような影響があるか、教えてください。

A

中小企業が資産として保有している公開株の取り扱いについては、一般新聞紙上などでもよく報じられています。そこで、ここでは、中小企業が発行する非公開株への影響について、説明しておきましょう。
株式会社の圧倒的多数を占める中小企業では、株券を発行していない会社が多いのが現実です。実際上これらの会社では株式の譲渡がなされることが少なく、株券発行のコストを考えるとその必要性が少なかったからです。ただ、商法上は、株式会社の成立後または新株の発行に際しては、その払込期日後、遅滞なく、株主に対して株券を発行しなければならず(226条1項)、これらの会社では、商法の規定に違反する状態が続いていたことになります。
これまでも、株主の申し出による株券不所持制度がありました(226条の2)。また、今回の商法改正により、定款で株式の譲渡制限を定める会社(「閉鎖会社」といいます)では、株主の請求がない限り、株券を発行することを要しないこととなりました(226条1項但書)。多くの中小企業は、「閉鎖会社」ですから、これによって株券不発行に伴う違法状態は解消されることになりました。
ただ、閉鎖会社を含めた非公開会社の場合でも、まったく株式が譲渡されないわけでなく、実際、M&A等に伴いその必要性もあります。この場合にはやはり株券の交付が必要であり、株券を交付せずに株式を譲渡しても、後にその効力について争いの可能性があります。
そこで、非公開会社でも、今後はより積極的に「株券不発行制度」を選択することも検討の余地があります。この場合には、株式の譲渡は当事者の意思表示のみで有効となり、株主名簿の書き換えによって第三者に対してもその権利を主張することができます。そのためには、前述の定款変更に関する株主総会決議以外に、名義書き換え未了の株主および質権者などの関係者に、公告および通知を行う必要があります(341条)。また、株券不発行の定めについての登記(188条2項3号、175条2項4号の2の2)が必要になります。

松浦哲哉(新宿支部)
司法書士法人法思 代表社員
TEL.03-3364-1220

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