中小企業でのメンタルヘルスケア(2005年7月)
社員のメンタルヘルスケアも大事と思っているけど、うちのような中小企業はどうすればいいですか?
長時間労働や職場のストレスは経営者・社員あるいは業種・規模を問わず、すべての企業にとって共通課題になりつつあります。 特に中小企業では一人当たりの貢献度も大きいため、急に社員が辞めたり欠勤したりすると対応が大変になります。また採用のコストや手間なども天秤にかけて考える必要もあります。中小企業だからこそメンタルヘルス対策に力を入れておくべきことでしょう。
ただ、現実問題として専任の産業保健スタッフを雇うのは大変です。そこで、外部の機関をうまく活用することで、効率的かつ効果的なメンタルヘルス対策を立てることを勧めます。例えば全国347ヵ所にある「地域産業保健センター」で中小企業の事業者や従業員向けに心の健康に対する相談や助言、指導を無料で行っていますので活用する、あるいは同業者の組合や健康保険組合がメンタルヘルスサービスを実施していたら、それを利用してみるのもいいでしょう。
うつ病で社員が休職してしまったらどう対応すればいいですか?
その場合、まず担当業務を誰が引き継ぐかという問題にぶつかります。中小企業の場合ギリギリの人数で仕事を回しているところが多いので、人を手配するなどして穴を埋める方法がありますが、うつ病など心の病気の場合は回復のペースに個人差があるため、代替要員の配置期間を定めにくいという難点があります。そこで以下の段取りで対応するとよいでしょう。
1.回復の見通しを立てる――医師の診断書などから休職期間の目安を確認する。もちろん本人の同意が前提です。
2.休職期間や業務内容に応じて、代替要員を決める――派遣社員、アルバイト・パート、他部署からの異動、あるいは代替要員は置かず部署内の他の社員がフォローするなど。
3.本人復帰後――できれば本人復帰後も1ヵ月くらいは代替要員をそのまま配置する。
また、対応策を就業規則などの社内規定に盛り込んでおくことをお勧めします。
特に休職期間を具体的に定めたほうがいいでしょう。「最大○ヵ月まで」と明確にした方が周囲の納得を得られやすいでしょう。
休職と復職を繰り返す社員がいる場合は、代替要員などのフォローよりも、最初から配置転換をする方が適切かもしれません。うつ病が長期化しているケースについては、うつ病の他にも心の病気を抱えていたり、本人のパーソナリティに問題がある可能性もあります。場合によっては雇用形態や労働契約の見直しも必要かもしれません。心の病気だからといって必要以上に譲歩するのではなく、通常の私傷病と同じように社内規定に基づいた対応をして、会社としてできることできないことを明確にすることが大切です。休職中の賃金については労災か私傷病かで対応を分ければ問題ありません。また対応策だけでなく、会社全体で業務内容の見直しなど業務の効率化や日ごろのコミュニケーションを密にするなどソフト面の予防策も欠かせません。
下斗米 裕英(港支部)
しもとまい社会保険労務士事務所
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