「クレーム対応業」とは?(2006年8月)
飲食店を2店経営しています。うち1店で客が減少しています。調べてみたらクレームが多く、社員の対応も悪いようです。店長や社員にどのように指導していったらよいでしょうか。
「顧客満足」にかかわるテーマですね。飲食業に限らず、お客様と接する仕事ならどのような業種でも重要なテーマです。アメリカの調査では、販売でもサービスでもお客様の約40%は何らかの不満を持っていると分かりました。日本の企業が行った調査でもほぼ同じような結果でした。
不満を持ったお客様はどのように行動するのでしょうか。
不満客のうち約20%のお客様は苦情をいい、そのお客様の過半数はリピーターになってくれます。しかし、80%のお客様は「黙って去ってしまう」のです。つまり、100人のお客様があったとして、32人(0.4×0.8)のお客様は二度と来てくれないのです。
すると不満を言ってもらうことが大切ですね。お客様はなぜ不満を言わないのでしょう。
一番多いのは「誰に言えばよいか分からない」ということです。次は「いい加減に扱われて嫌な気分になるのでは」という気持ちからです。
ですから、対策としては、第一に「クレーム大歓迎」のメッセージを打ち出すことです。第二に、誰に言えばよいのかなど「お客様がクレームを言いやすい環境をつくる」ことです。普通の商店では、レシートに「ご意見がありましたら、どのようなことでもぜひお聞かせください」と大きく印刷するなどの対策も有効です。もちろん電話番号も分かりやすく記入します。
お客様向けの対策は分かりましたが、社員の意識をどうやって高めていけばよいのでしょうか。
それが大切ですね。私は特に「サービス業はクレーム対応業」だと言っています。たとえば皆さんも、ホテルに泊まって何らかの不満を持つことがあるでしょう。つまり、サービスの内容が多岐にわたるため、どれほど注意をしてもなかなかクレームをゼロにすることは難しいのです。無論、クレームゼロへの努力は大切ですが、一方で、「クレームへの対応が生死を決める」という意識を持つことが大切です。
私もある店で「生ぬるいビール」を出されて、腹を立てたことがあります。しかし、従業員の対応が大変真面目で真剣だったため、逆に感激して、以後、その前を通るたびに立ち寄るようになった店があります。最初にクレームがなかったら、そんなロイヤルユーザーにはならなかったでしょう。つまり、「クレーム対応業」というのは「クレームへの態度で信者客を作ることもできるし、永久に追い払ってしまうこともできる」ということです。
また、クレームがあればこそ改善点が発見できるわけです。一流ホテルなどでは、コンサルタントが、「ミステリー・ショッパー」と称して、客になりすまし、サービスなどをチェックする方法が盛んです。本来、大変お金のかかるこのようなことを、お客様が無料で引き受けてくださるのですから、ぜひとも、真剣に対応して、店の改善やロイヤルユーザーの創出に生かしてください。
根本寛(目黒支部)
近代経営研究所・代表
中小企業診断士・経営コンサルタント
http://www.kcon-nemoto.com