高年齢者雇用確保措置としての継続雇用と従前の嘱託再雇用制度 (2006年12月)
本年4月1日から始まっている高年齢者雇用確保措置(改正高年齢者雇用安定法)の中身を教えてください。それはこれまで当社が実施していた嘱託としての再雇用制度とどこが違うのでしょうか。
会社として必要と考える社員なら定年後も嘱託再雇用で残し、そうでないなら新しい戦力を入れ、新陳代謝をはかりたいというのが貴社の再雇用制度でしょう。
ところで、社員側の言い分としては年金制度が既に平成13年から65歳満額支給に向け、繰り下げが行われています。したがって、60歳で退職しても、年金は満足に受給できず、生活できない事情があるのです。特に、定額部分につき段階的に引き下げがすすめられ、平成25年まで続きます。その間を、国は民間企業に何らかの雇用確保措置を取らせ、定額部分の引き下げに応じたつなぎ措置を求めたのです。この確保措置が平成18年4月1日から段階的に施行されています。中身は①定年を65歳に引き上げる、②定年制を廃止する、③65歳までの継続雇用措置をとることの3つから選択できますが、概ね、中小企業では移行が容易な継続雇用措置がベターだと思います。これには定年はそのままで、退職させずに、勤務期間を延ばす勤務延長と、一旦退職し、嘱託や契約社員等の名称に変更して雇用を継続する再雇用があります。この後者の方法が貴社の再雇用制度と類似しているのです。
今後60歳定年後の社員は希望すれば、全員を再雇用しなくてはならないのですか。
どんな社員が定年後に再雇用されるのか、就業規則等で基準を示すことが必要です。それをしなければ、ご質問のように本人が希望するだけで誰でも継続雇用しなくてはならなくなります。例えば、(1)「健康で引き続き業務に支障がない」という本人の意思、(2)「人事評価が直前2期連続Bであった者等」ある程度客観的にみられる能力基準を設定することが必要になります。よく、第3の基準としてさらに(3)「会社が必要と認めた者」という基準を加重する例をみかけますが、(1)から(3)すべてを充たさなければならないとすると恣意性が高いので工夫が必要です。例えば(2)と(3)を結合し「人事評価が直前2期連続Bであった者又は会社が必要と認めた者」と規定することでいずれか1つの基準と見なされ、法違反とまでは言えません。なお、法違反の場合、罰則はありませんが、職安による助言、指導、勧告の対象となります。
要するにポイントは会社の一方的な基準ではまずいということです。労使協定や就業規則等でなるべく具体性のある基準を明確にし、定年を迎える社員に提示することです。
石田 仁(豊島支部)
経営労務コンサルタント
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