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経営者Q&A

役員の退職慰労金について(2007年6月)

Q

この度、役員を退職する事になりますが、役員退職に関する「退職慰労金」についての概要を教えて下さい。
役員の「退職慰労金」という概念は、商法上では見当たりませんが、ほとんどの会社で、退職する役員に対しては、在任中の功労に報いる意味で、退職慰労金を支給しています。ちなみに、役員の退職慰労金に対する、判例はつぎの様に判示されています。

A

『株式会社の取締役または監査役であった者が退職した場合において支給される退職慰労金は、それぞれ在職中の職務執行の対価であるときは、商法第269条(同法第280条によって監査役に準用される)にいう報酬に含まれるものと解される。』(昭和44・10・28.最高裁)
退職慰労金のすべてが役員在職中の職務執行に対する純然たる対価としての性質を有するものとは断定できませんが、その業務担当部分が在職中の職務執行の対価としての性質を有することは否定できません。これに関しては次のように判示しています。
『役員在職中の功労の報酬的部分であっても、在職中の職務執行の対価として支給される趣旨を含んでいるのが普通である。』(昭和48.3.29大阪高裁)
この様に職務執行の対価と考えられますから、在職中の特別功労に対する報酬としての性質を含んでいる場合でも、商法第269条の報酬に該当すると考えられます。
従って、役員に対する退職慰労金は報酬の一種であり、商法第269条の『取締役が受ける報酬は、定款にその額を定めたときは、株主総会の議決をもってこれを定む』との規定されており、その金額について、定款の規程または株主総会の決議を必要とすると解されます。

Q

役員退職慰労金は損金にはなるのでしょうか?

A

役員退職慰労金は、その持つ意義から、原則として損金処分することができます。しかし役員が退職するのに備えて役員退職積立金を利益処分として積み立て、役員が退職したときにこれを取り崩して行う場合には、利益処分によって退職金を支給したことになり、損金とはなりません。
ところで、役員退職慰労金は、その支給される金額が確定した日を含む事業年度の損金となりますが、その金額について株主総会の承認が必要です。しかし、株主総会では、(1)具体的な金額を定める場合と、(2)支給することのみを決議し、その金額については取締役会に一任する場合の2つの方法がありますが、一般には(2)の方法が多いようです。いずれの場合も、金額が具体的に確定した日を含む事業年度の損金ということになります。

Q

役員退職慰労金規程は設定しておいた方が良いのでしょうか

A

役員の退職慰労金も報酬の一環であることは前述の通りです。当然報酬ということになりますと、株主総会の決議が必要です。しかし、個々の役員について、退職するたびに株主総会の決議をするに越したことはありません。判例でも『退職金の決定について慣例または内規により一定の基準がある場合には、株主総会において退職金の額を、その基準にしたがって、取締役会で決定することを決議することができる』としています。この主旨に従い、役員の退職慰労金について規程を作っておくことは、会社にとっても役員にとっても有意義な事です。

戸室 康廣(中央区支部)
戸室労務管理事務所
社会保険労務士
TEL.090-3330-6203

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