親族外承継について(2008年4月)
親族以外から後継者を考えなければなりません。どの様に考えて進めるべきでしょうか。
「親族外承継」には、社内の人材が継ぐ場合と社外から人材を招聘する場合とがあります。これも経営者一族が株主としてはそのままで経営権を社内の後継者に委譲するケースと経営者一族が持株を手放し社内役員や幹部に譲渡し会社経営から身を引くケースがあります。これが一般的にはMBO(マネジメントバイアウト)とかEBO(エンプロイーバイアウト)とか呼ばれているものです。それから株主は経営者一族のままで、社外から経営者人材を招聘する場合です。
株主と経営者が異なる形のものではどんな方法がありますか。
通常は後継者である息子等の親族が育つまでの間、番頭のような役割を果たしてきた役員又は社外から適切な経営者人材の招聘等を行い、息子等への承継がスムースに行われるようにする方法が一般的には多く活用されています。しかし、ここで注意しなければならないのは、会社の株式を全経営者一族が所有しているままで、経営者のみが社内外の他人に交代した場合、前経営者時代の上下関係がそのまま引き継がれてしまい、新経営者の意識に「自分は所詮雇われ社長」的な意識が芽生えかねない危険性もはらんでいます。また、社外から全く他人を招聘する場合は、これまで同族経営であった中小企業では、そのトップが他の経営幹部や従業員に気持ちよく迎え入れられるかどうかは大変難しい問題を孕んでいます。相当な準備や事前の社内合意を取り付けておくことがどうしても必要になります。
将来的にも親族内の事業承継は難しいのではないかと考えていますが、その場合はどのように考えたらいいでしょうか。
その場合は、一旦「所有」「経営」を分離する方法を使うのも一案ではないでしょうか。具体的には、会社を「事業会社」と「資産会社」に分け、社内なり社外の経営者に事業会社を任せる方法です。「事業会社」と「資産会社」を分離することで会社を次世代に引き継がせやすくする方法です。企業の資産・負債のみを引き継いだ「資産会社-管理会社」が、株式分割方法を使って設立した「事業会社」から賃料収入と株式配当で収益を得ることになります。下記の図はこの「所有」と「経営」の分離例です。 いずれにしましても、「企業承継-事業承継」問題は、その企業の「資産」「負債」「事業性」をきちんと精査し、どのような形で会社の今後を編成し、どのような形で事業を引き継いでもらうかを具体的に検討することから始まります。
渡辺 正幸(豊島支部)
(有)彩経営コンサルタント事務所
中小企業診断士・経営士
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