LLPを活用して新事業展開(2008年7月)
LLPについて教えてください。
LLPとは、Limited Liability Partnershipの略で、有限責任事業組合のことです。平成17年8月1日施行の「有限責任事業組合契約に関する法律」により新たに設立できるようになった事業体で、既に相当数の活用事例が出ています。
LLPが組成された背景とは。
産業構造の変化により、事業体が従来の資本集約型産業から、アイデア・ノウハウ・ブランドといった無形財産を保有する人的財産集約型産業へと徐々にシフトし始めています。そうした流れの中で、お金が無くても専門技術やノウハウを持った人的資源を活かして新たな事業に取り組み易くするための制度として、LLPが考え出されました。
LLPのメリットは何でしょうか。
物的組織(株式会社)と人的組織(組合)の良いとこ取りが許されています。すなわち、外部的には出資の範囲内での有限責任でありながら、内部的には内部自治の原則が謳われ、特に取締役等の設置といった機関設計の厳格化が求められていない点に特徴があります。加えて、契約書で定めれば、出資割合とは無関係に議決権割合を決めることも、損益分配割合を決めることもでき、かなり自由度の高い組織体と言えます。また、税務処理においてもLLPは、法人格を有さないため、LLP自体には課税されず、出資者たる各構成員に課税(パス・スルー課税)されます。よって各構成員は、損益の分配額を当期の所得として取り込み、他の所得と損益通算することになります。さらに、設立手続きも約10日で登記完了するなど、費用面でのメリットも大きいです。
具体的な活用例がありますか。
現状では、”ものづくり”を活性化する事例が未だ少ないようですが、例えば、大手メーカーと高度の技術を持つ中小企業との共同研究開発を予定したJV立ち上げや産学連携、ソフトウェアの共同開発、企業内ベンチャー、士業の専門家集団、映画製作委員会等には有効な手法となります。技術やノウハウがあってもお金の無い中小企業やベンチャーが大手メーカーの下請けに甘んじることなく、資本提携により共同開発を行うことも可能となります。また複数の投資家(VC)が新事業に打って出る場合であっても民法上の組合のように無限責任を負う必要もなく、あくまで出資の範囲内にリスクを抑えることもできます。今後、エンジェル税制拡充で個人投資家を呼び込むことが出来れば、さらにLLPの活用事例の増加が期待されます。
加藤 一志(杉並支部)
加藤公認会計士事務所代表
http://www.kato-co.jp/
監査法人ベリタス代表社員
http://veritas.main.jp/