下請け代金の支払い確保について(2009年6月)
私の経営する会社は、ソフトウェア制作の大手業者から委託を受けて、ソフト制作の下請けを行っている小規模会社です。契約で決まっていた料金を、発注会社から一方的に引き下げを通告されました。下請法という法律で対抗する手段があると聞きましたがどういう方法でしょうか。
親事業者と下請事業者の間の受注、発注取引の中でトラブルが生じることがあります。そこで、親事業者と下請事業者の公正な取引を目指し、立場の弱い下請事業者の利益保護を図っているのが、下請代金支払遅延等防止法(下請法)です。同法は、親事業者による優越的地位の濫用等の排除されるべき行為の内容を具体的に定め、迅速かつ効果的に下請事業者の保護を図ろうとしています。
対象となる親事業者は、資本金や出資額が1000万円を超える法人で、下請業者は、親事業者の資本金等を下回る規模の業者です。対象となる「下請取引」は、親事業者が下請事業者に対してなす製造委託、修理委託、情報成果物作成委託(ソフトウェア制作の委託はこれに該当します)、役務提供委託(建設工事を除く)です。
下請法では、当事者間の合意があっても認められない行為がいくつも定められています。例えば、発注した役務の提供行為の実施日から60 日を超えて下請代金を支払うことや発注時に決めた下請代金を減額することなどです。やや詳しく言うと、親事業者の義務として((1)書面交付の義務、(2)支払い期日を定める義務、(3)書類の作成・保存義務、(4)遅延利息の支払義務)、親事業者の禁止事項として((1)受領拒否の禁止、(2)下請代金の支払遅延の禁止、(3)下請代金の減額の禁止、(4)返品の禁止、(5)買いたたきの禁止、(6)購入強制の禁止、(7)報復措置の禁止、(8)有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止 、(9)割引困難な手形の交付の禁止)などです。
そして、これらの法違反に対する措置としては、所轄官庁である公正取引委員会が勧告という行政指導により、下請事業者が違反行為により被った不利益の救済(原状回復措置)を含めて親事業者に是正を促すという手法をとっています。これらの措置により、違反事件については、迅速な処理を可能にし、かつ、下請事業者の不利益の回復を図っています。親事業者が勧告に従わない場合は、公正取引委員会は、改めて独占禁止法の不公正な取引方法(優越的地位の濫用)に該当するかどうかを調査して、違反が認められれば当該親事業者に対して排除措置命令が下されることになります。
こういった元請事業者の行為に対しては、公正取引委員会に通知、相談して上記の対応をしてもらう方法もありますが、法の趣旨を指摘して、弁護士等に交渉してもらう方法も考えられますので、相談することをお勧めします。
高下 謹壱(江東支部)
高下謹壱法律事務所
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