売上の壁と組織化(2011年11月)
当社は年間売上高7000万円で10人の従業員の製造業向けに特化した清掃サービス業です。創業25年になりますが、これまで給料の遅配もなく健全に事業を営んできましたが、長年の目標である年間売上目標1億円が突破できずにいます。社長である私が営業し、営業主任がフォロー、事務経理のパートが1名、その他の7名は事業課長1名の他は作業員という構成です。なぜ長年の売上目標が突破できないのでしょうか?
中小企業は、売上規模が大きくなることが全てではありません。規模に見合った事業のあり方も当然あります。しかし、社長の経営への思いの中に一定以上の売上規模への成長を願う気持ちがあるならば、その思いを共有して全社員でその目標に向けてまい進していきたいものです。ではなぜ長年1億円の壁を突破できないのでしょうか・・この「売上の壁」は業種、業態によって違い、例えば物販業であれば、仕入分が売上に加算されるので2億または3億が壁というケースもあります。いずれにしてもこの売上規模で壁に突き当たるのは、簡単にいえば、会社が「組織化されていない」という点があります。第一に営業組織です。社長が長年の付き合いを生かし営業活動に走り回っても社長一人で受注できる客先数は自ずと限定されます。営業活動が組織化されず、実質社長一人の手中にあるならば、現在より2~3割増の売上アップを望むのは物理的に困難といえます。第二に事業体制です。この規模の場合多くは、業務フローがルール化されておらず、リーダークラスの育成がなされていません。更にはパソコン活用の立遅れや、業績管理が甘く、多くの場合各社員が前月までの業績をタイムリーに把握できない状況にあるために対策が遅れてしまっています。ではどのような体制が望まれるのか・・まず営業的には社長の双肩にかかる営業体制の打破が一番です。要は、自社の商品・サービスの強みを肌で知る社長以外の他の幹部社員の誰かが例え兼務でも社長と二枚看板で営業活動に本気になることが先決です。そして、受注してきた仕事の量をこれまで以上にこなすための事業体制の構築が不可欠になります。事業課長以外のリーダーを育てる教育のしくみを整えて業務分担し、PC操作等のスキルアップを図って業務へのパソコンの活用を進めつつ、受注から引渡しに至る業務フローをきちんとルール化し、それに見積や請求、売上集計などの経理・業績管理を社内の誰の目からも「見える」状態にして差異対策を早期に立てられるようにすることです。
ではどうすればそれらが実現できるのでしょうか?第一には、売上目標突破の先に社員の具体的な夢(給与増や権限拡大、地位向上、自己実現など様々)を描ける状況を社長が築くこと、即ちその夢を社員と共有できることが絶対条件です。そして第二に組織化のための営業や事業体制構築につき、経費コンサルタントなどのプロを活用し、早期に組立することです。(今まで達成できなかった自社独自の取組みでは困難です。)第三にこれは一番大切なことですが、経営者や管理社員を中心に意識改革を含む「経営改革」に取り組んでいく不退転の決意とその継続です。自社を改善できるのは自社社員自身です。今までより上位のしくみの構築のために皆で知恵を出し合える組織を目指すのが必須条件です。
野澤 周永(千代田支部)
㈱Vコンサル 代表取締役
経営コンサルタント
TEL.03-6625-2260
http://www.vcon.jp