危機管理について(2012年2月)
会社の危機管理ということが言われていますが、どのようなことでしょうか。
会社を経営していると、突然予想外の危機が発生することがあります。自然災害や大事故などのほか、取扱商品によるお客さんへの被害発生、社員の不祥事による社会的非難発生などいろいろあります。このような突発的な会社の危機に対して、平時から会社としての備えをつくっておくのが危機管理の問題です。
弊社では食品を製造販売していますから、例えばそれで食中毒が発生したような場合などですね。
そうです。まず第1に、経営トップに何時いかなる時でもすばやく問題発生の第一報が入る体制をつくっておくことです。しかし些細なことまで何でも報告というのでは困りますから、どのようなレベルの問題ならトップにすぐ報告という基準を明確にして、社員全員に周知徹底しておくことです。
第2に、急いで正確な情報を集めることが必要です。
そのための調査チームをすぐに立上げることです。これは発生した事故に詳しい者を中心とした実働部隊とすることです。ただし、事故当事者となる者は除外する配慮が必要です。情報の歪曲や隠蔽などのおそれがあるからです。できれば、会社の立場だけでなく、冷静に客の立場や社会的見地など広い視野から見ることができる人物をあてられればベターです。
第3に、集めた情報の範囲で、できるだけ早く会社としての対処方針をしっかり立てること。現場まかせやその場しのぎが最もよくない。また、いつまでも方針をはっきりさせずグズグズしていると変な憶測が広がってしまいます。事故原因がまだ不明確なうちは、会社が日常行なっている安全対策をきちんと説明し、現在の調査状況を正しく説明し、今後の見通しをできるだけ具体的に説明する。原因が明らかになったら、会社としての責任の取り方を明確にしていく。その態度次第によっては逆に信用が高まることもあるのです。
ここで大切なのは、社内の感覚だけだと、どうしても弁解がましい説明になりがちです。社外の人物を1人対策会議に加えることです。
顧問弁護士がいればそれでいいし、いなければ、会社の事情を理解できる取引先の人など、社外で信頼できる人を加えることです。
第4に、中小企業ではあまりないでしょうが、大事故の時は第3者委員会が作られることがあります。この第3者委員会の調査には会社の中枢幹部が協力する必要が出てきますが、顧問弁護士はこれに加えないことです。第3者委員会はいわば取調べ側ですから、顧問弁護士はあくまでも会社を守る弁護人としての立場に立って対応してもらわなければなりません。たとえ会社が何も悪いことをしていなくても、会社の立場で正しく説明できる者がいることは必要です。
第5に、経営者としては、これらの対応と並行して会社立直しの方針をしっかり立て、社員の安心と信頼を確保し、会社の結束を守ることを考えていかねばなりません。
以上のようなことを、平時から想定して方針や行動指針、具体的行動手順などを策定して文書化し、社員全員に周知しておくことが、危機管理です。
このような備えがあれば、不測の事態が発生しても混乱せず冷静に対応できるので、単に会社を守るだけでなく、適切な危機対応を通じて社会的信用も向上し、社員の結束も高まることになると思います。
原口 紘一(三多摩支部)
原口法律事務所
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