配偶者の居住権を保護するための方策について(2019年5月)
今、民法(相続関係)の改正が話題になっていますが、そのなかでも「配偶者居住権」とは、 どのようなものなのでしょうか?
「配偶者居住権」には、「配偶者(長期)居住権」と「配偶者短期居住権」があります。「配偶者(長期)居住権」を取得したときは、「配偶者短期居住権」は成立しないので、まず、「配偶者(長期)居住権」から説明しましょう。
配偶者(長期)居住権」
※条文上は、単に「配偶者居住権」とされています。
配偶者相続人が、被相続人が有していた居住建物の「所有権」を相続しない場合でも、当該居住建物に相続開始時に居住していた場合に一定の要件を満たせば、原則として 「終身の間」、「無償」で居住できる権利で、「登記」することもできます。
※居住建物が、「居住権」と「所有権」に分離することになり、「居住権」の財産評価額が問題となり、賃借権に類似しています。
※この権利は、生存配偶者は、それまで居住してきた建物に引き続き居住することを希望するのが通常であり、住み慣れた居住建物を離れることは、精神的・肉体的に大きな負担となると考えられることから、配偶者相続人を保護するために創設された制度です。
(事例)
被相続人の相続人は、配偶者と子1人。
遺産分割協議で、子が居住建物の「所有権」を取得し、配偶者相続人が「配偶者居住権」を取得したとすると・・・
配偶者相続人は、「所有権」を取得しないので、遺産分割により、預貯金などをより多く相続できる可能性があり、配偶者が保護されます。
(成立要件)
①相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していたこと②遺産分割又は(遺言による)遺贈により、「配偶者居住権」を取得したこと但し、相続開始の時に居住建物が配偶者以外の者と共有のときは、成立しません。これは、第三者に配偶者による長期で無償の居住を受忍させるのは相当でないからです。
「配偶者短期居住権」
無償で使用できるが、登記はできず、使用貸借に類似しています。
(成立要件)
配偶者が、相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していたこと
但し、①前述の「配偶者(長期)居住権」を取得したとき ②配偶者が、相続人の欠格事由に該当し若しくは廃除によって相続権を失ったときは、成立しません。これは、①の場合は認める必要性はなく、②の場合は保護する必要性がないからです。
(存続期間)
最低でも、被相続人死亡の時から、6か月間は存続します。
小西 明夫(新宿支部)
司法書士・行政書士
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