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経営者Q&A

分かりやすい売上目標の立て方(2001年1月)

Q

2年前に経営計画を作りましたが、売上が減り経営状態が厳しくなるばかりです。経営計画を作るにあたり、社員に売上高と利益の関係をできるだけ明確に示したいのですが。

A

売上高が減少傾向とのことですが、損益分岐点を目標の一つに取り入れたらどうでしょうか。損益分岐点売上高とは、固定費をカバーするだけの付加価値を生み出す売上高のことです。損益分岐点計算は、次のようにします。まず、固定費を出します。固定費は売上の増減に関係なく掛かる費用で、直近の決算書から人件費、家賃、支払利子等固定費の合計を計算します。次に商品別の付加価値を計算します。商品の付加価値は、売価から仕入価格、販売運送費等の変動費を差し引いた残りの金額です。営業活動で商品を売り上げるたびに付加価値が増えていき、付加価値の累計が固定費以上になると利益が出ます。

Q

損益分岐点の考え方を社内に示すと、どのような効果がありますか。

A

社員はどのように考えたらよいのか、分かるようになります。本社管理部は経費目標、営業担当は販売目標、購買担当は仕入目標を黒字化という目標に向かって設定でき、また、お互いに利益を出すには密接な関係が要ることがわかります。  
例えばA商品は、販売単価10万円で仕入価格や販売運送費等変動費の合計が9万円であると、1個当たり1万円の付加価値が出ます。一方、1ヵ月の固定費が2000万円であれば、2000個以上売れば利益が出ることになります。この2000個が損益分岐点の売上数量です。本社管理部門は2000万円の固定費を下げて利益が出やすい条件を作り、営業担当と購買担当は固定費以上の付加価値をいかに生み出すかに知恵を出し合うようになります。

Q

目標を設定するにはどうしたらよいでしょうか。

A

損益分岐点を一つのポイントにして、目標を設定したらどうでしょうか。次を参考にしてください。
(1)売上目標の設定方法の例  取引先別の検討は、第一に取引先全体の取引、次に個々の取引ごとに付加価値を調べ、課題を抽出し改善目標を設けます。森、次に木を見てください。商品別や地域別の売上高計画には、売上付加価値額計画を追加して設定します。売上と付加価値のバランスが必要だからです。
(2)受注見積の計算方法の例  原価を固定費と変動費に分けると、適切な見積もりができます。射出成型業や印刷業を例にしますと、原料代・成型加工費や用紙代・印刷費等の変動費は、注文数に応じ増減するので、注文量に応じ価格を設定します。一方、成型金型代や刷版代等の固定費は、注文量に関係ないので、固定額で見積もります。

Q

ところで、会社全体の目標として、売上目標を設定するにはどうしたらよいでしょうか。

A

次の損益分岐点売上高の計算式を使ってください。
損益分岐点売上高=固定費÷〔1―(変動費÷売上高)〕

この式によって、利益を出すために必要な会社全体の売上高である最低売上目標が計算できるので、会社全体の売上目標が設定できます。

経営コンサルタント・ 中小企業診断士
窪田靖彦(品川支部)
TEL 070-6194-6861

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