税制を有利に活用してバブルの清算を(2000年9月)
会計基準の見直し、キャッシュフロー会計等がいわれていますが、私たち中小企業経営者は、これにどう対応したらよいでしょうか?
まず、御社の前期末の貸借対照表の中で、帳簿価額が現在の時価より高くなっている、いわゆる含み損となっている資産がありましたら、これを時価に修正する作業をお勧めします。
具体的にどのようなものが考えられますか?
バブル期に購入した不動産、含み損となっている株式、ゴルフ会員権、あまり利用していないレジャー会員権等があげられます。また、その他に不良在庫、長期間回収されていない売掛債権等があります。
処理の方法および注意すべき点について教えてください。
不動産については、不要なものなら他に売却すればよいわけですが、会社で利用している物件や、愛着があって他人に売却したくない物件は、社長個人や関係者ならびに関連会社がこれを購入する方法も考えられます。
この場合、バブル期の価額では高値すぎて利回り的に採算がとれない物件でも、下落した現在の価額で購入すれば採算が合うケースも多いと思われます。それに何より一番大きなメリットは、簿価と売却価額との差額は当然会社の損失となって、5年間(売却年度を含めると6年間)この欠損金控除が認められることです。大まかに計算して1億円の損失が出た場合、その後、会社の利益が上がったと仮定すると、約4000万円ほどの税金が減ることになります。
なお、他人への売却でない場合には、売却価額が妥当かどうかポイントとなりますので、損失が大きい場合、不動産鑑定士の鑑定評価をつける等の売却価額に対する客観性を証明する等の慎重さをもつべきでしょう。ゴルフ会員権の処分も同じでしょう。
不良在庫を処分した場合には、くれぐれも処理業者の明細票等のなんらかの証拠を残すということに気をつけてください。
長期滞留売掛債権については、回収に努力するのは当然ですが、それでも回収できない場合、相手方の債務超過が長く続いている場合には、債権放棄の通知を出す等の一定の方法の下に貸倒処理が認められています。この方法を決算前に考えられることをお勧めいたします。
なお、これらの方法は、欠損金の繰越控除の期限が5年間であることを考慮して、同じ期に一気に行わずに、利益の出具合を考慮して数年かけて行うことをお勧めします。
個人についてはどうでしょうか。
個人も考え方は同じですが、個人の確定申告では、税制上売却損が他の所得と通算(差し引き)しないものも多いので、この点に気をつけてください。別荘等は原則として他の所得と損益通算されません。また、株式の売却は他の所得と通算されませんが、ゴルフ会員権の売却損は損益通算できます。
土田会計事務所/土田義二(豊島支部)
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