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経営者Q&A

賃上げの方法について(2024年2月)

Q

当社の実績は、コロナ前を回復していませんが、物価高騰のため、賃上げしたいと考えています。どのような方法で賃上げすればよいでしょうか。わかりやすく教えて下さい。

A

一般に、賃上げとは月例賃金額を上昇させること。内容は、基本給にかかるべースアップ(略してベア)や定期昇給、他に手当の改定が含まれます。ベアとは、自社の業績が良い場合に、自社賃金を地域や他社との水準に合わせるなどの目的で、基本給の賃金表を改定し、給与を増額させることを意味しています(厚労省「賃金引き上げ等の実態に関する調査」の定義では、ベアとは賃金表の改定により賃金水準を引き上げること)。改定を行うことで、賃金表の適用される社員の賃金額が上昇します。ベアは、特に、法的根拠があるのではなく(最低賃金を下回る水準でなければ)、実施は任意。昨年の春闘は連合発表で定昇とベア合わせ、30 年ぶりの高賃上げ率3.58%(大企業中心)。本年は賃上げ目標5% 以上。定昇2%、ベア3% 以上が春闘方針です。
定昇とは、定期昇給の略語で、あらかじめ労働契約、就業規則や労働協約に定められた昇給に関する制度です。基本給を賃金表で運用している場合は、その改定ではなく賃金表上の移動となります。例えば1 等級に属する現在10 号200,000 円の若手社員が1 年経過で2 号分進み、12 号210,000 円に昇給する等(例として1 号5,000 円刻みの1 等級内での移動)。昇給に関する事項は、労働契約、就業規則には必ず記載する必要があります(労基法第15 条1 項、第89 条2 号)。原則として、一定の時期に毎年増額するのが一般的。就業規則では、「毎年4 月1 日に基本給について昇給する」と定めているのに、昇給がなければ、労働契約、就業規則違反となり、引上げが必要です。但し書きで「経営状況により昇給しないことがある」とあれば、昇給しないこともあり得ます。他方、定めを「毎年4 月1 日に基本給について昇給することがある」と改定すれば、昇給するかどうかは会社に裁量があり、昇給しないことが容易となるでしょう。
中小企業でも貴社のように努力して賃上げを行っています。賃金表で運用しない(運用できない)会社が多いので前述のベアと定期昇給の区別(実務は定期昇給が先、ベアが後の順)があいまいです。また、基本給の改定による賃上げが賞与や退職金の増額に連動しないよう諸手当の増額で賃上げをしている例もあります。結局、賃金は会社ごとに諸事情や個性があり、世間での定昇やベア率、あるいは賃上げ率にこだわる必要はないでしょう。人手不足ですが、賃上げは、会社の実力に合わせ、社員の生活や意欲向上のためです。自社の経営実績や現実の賞与、退職金規定を考慮し実施することが大切です。

石田 仁(豊島支部)
協同組合ディーデイーケー
経営労務コンサルタント・社会保険労務士
電話:03-3980-8298
fax:03-3980-8380
HP:http:/www.ddk.or.jp
e- mail:ishida@ddk.or.jp

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