上司の注意・指導に従わない『ハラハラ社員』にどう対応する?(2023年2月)
「ハラハラ」に悩む上司が増えていると聞きました。具体例と対策を教えて下さい。
「ハラハラ」とは「ハラスメント・ハラスメント」のことです。他者からの注意・指導に対して「嫌だ、不快だ」と思った人が、「それはハラスメント」だと過剰に主張する嫌がらせ行為です。
ハラハラは、実際にはハラスメントに該当しない注意・指導に対して行われるのが特徴です。
【ハラハラが起こりやすい具体例】
・遅刻が多い部下に注意した
⇒遅刻した部下に対して注意・指導するのは上司として当然の役目ですが、それをパワハラ(精神的な攻撃)だと主張する人がいます。
・スキルアップのために普段より高いレベルの仕事を与えた
⇒部下の成長のために、多少ストレッチをかけた仕事を与えることはあると思いますが、それを能力以上の業務を強要されたとしてパワハラ(過大な要求)だと主張する人がいます。
・子どもの体調不良で休んだ部下に、翌日子どもの様子を尋ねた
⇒上司として状況を確認しているのですが、過剰に反応して「プライベートに踏み込まれるのは不快だ」とパワハラ(個の侵害)を主張する人がいます。
【ハラハラが職場にもたらす悪影響】
・上司が委縮してしまい、必要な部下への注意・指導ができなくなる
・部下に仕事を頼みづらくなり、上司が長時間労働に追い込まれる
・上司がメンタル不調に陥り、休職や退職に追い込まれる
ハラハラをする側の社員にとっては、上司からうるさいことを言われなくなるので居心地が良いように思えますが、実は自分にとっても悪影響なのです。
・上司からの指導が受けられなくなるので、成長の機会を失う
・上司からの評価が下がる
どちらも昇進・昇格・昇給・賞与に響くことになります。
そして、同じ職場で働く人たちにとっても悪影響があります。
・上司のマネジメントが機能しなくなるので、成長の機会を失う
・ハラハラ社員と上司のやりとりを見ることで、モチベーションが下がる
このように職場にハラハラ社員がいると結局は誰も得をしません。人を育てるという職場の機能が崩壊し、労働生産性も低下します。
【職場でできるハラハラ対策】
①社内研修でパワハラの判断基準を職場の共通認識にする
⇒業務の適正な範囲内で行われる指導や注意であれば、本人が不快に感じたとしてもパワハラにはならないことを職場の共通認識とします。
②ハラスメント防止規程で「ハラハラ」を処罰の対象にする
⇒処罰の対象になることを定めて周知すれば、一定の抑止力が期待できます。また、実際に発生した場合には処罰の対象となります。
③安易に謝罪せず、冷静に指導し続ける
⇒正当な業務指導を行っているのであれば、相手が「パワハラ」と主張してきたとしても、安易に謝罪するのではなく、「どの部分をパワハラと感じたか」を相手に説明させる等、冷静な対応を心がけて下さい。安易な謝罪はハラハラ社員を助長させます。
ハラスメントが行われている職場は働く人たちのモチベーションが下がり、労働生産性も低下しています。ハラスメント防止対策を実施し、生き生きと働ける職場を作ることが労働生産性向上の第一歩です。
大谷 雄二(大田支部)
ソラーレ社会保険労務士法人
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