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中小企業家群像

働きがいのある会社を目指して ~社員満足、お客さま満足、社会貢献のバランスを~
三興塗料株式会社 清水 雄一郎 氏(板橋支部)

三興塗料株式会社
代表取締役
清水 雄一郎 氏(板橋支部)

 

【会社概要】
設 立 1966年
資本金 1,000万円
業務内容 建築用塗料、防水材、塗装用品を扱う卸売業
社員数 40人(内、女性社員数7人)
住 所 東京都板橋区前野町3-50-2

過去もなく、未来もなく、あるのはただこの瞬間のみ、という言葉がある。日々の向き合いへの問いである。
自社であり、実家でもある三興塗料株式会社。幼年期、清水雄一郎氏は親の手を握り、幼稚園へと登園するため階段をおりる。2階の事務室、1階の作業場と社員さんと笑顔とやわらかい声がゆきかう。当時も声をかけてくれた社員さんとは、いまも変わらず顔を合わせる場をいつにしている。
「お互い様、おかげ様です」。清水氏は社員さんとの向き合いを語る。

事業承継後からの徒手空拳

「父(睦雄氏)は関西の塗料メーカーの営業マンでした。縁が整い東京板橋にて創業。出身校松山商科大学の校訓三実(真実・実用・忠実)に基づき会社を興し、経営する覚悟を。これが社名の由来です。おかげさまで塗料・塗装器具の卸売業として第56期の歩みを重ねています」と清水氏。「私は大学卒業後、塗料メーカーにて修行をさせていただきました。いまにつながる示唆をいただき、当社の強みになっています。そして事業承継を見据え、当社へ。日々飛び込みの営業。また姉が先だって働いており、助かりました。姉という社内でのラインは有難いです。締めるところで締めてもくれて」と笑う。
「いまでこそ笑って話せますが、当時は冗談抜きでガーンときた出来事もありました。
それは新卒採用の合同説明会。会場はサンシャイン60。学生150人に対し、企業20社でプレゼンをできる機会があったのです。幸い抽選に当たり、気合をいれて学生との向き合い。その後、どれだけの学生が当社のブースに来てくれるのだろう、とワクワクしていたら…なんと午後の四時間、ひとりも学生は来ず」。「学生が来てくれる会社はなにが違うのだろう、とその場で他社研究を始め、自社を見つめ直すきっかけになりました。また社内では、30歳になった社員から退職願を受けるような時期でした。理由を聞くと “会社の未来が見えない” と」。「入社してからはすぐ、経営の実学を学ばねばと古田土会計さん(江東支部)の勉強会にも参加。それら学びをアウトプットし、社長に就任した七年前に経営計画書を書き始めました」。「社員に寄り添った会社になりたい、とその一心でした」と指がギュっと絞られる。経営理念で最初にくるのは“社員”という言葉である。

歩みから価値を見出し、日本でいちばんを目指す

「当社は卸売業ですから、塗料そのもので価値を出すことはできません。ここで二つの歩みに気がつき、活路を見出すことができました。ひとつは自社配送便の活用。
もうひとつは調色への挑戦です。卸売業は塗料の配送を別業者に頼るのが一般的。対して、父は配送を自社便にすると決断。早朝から現場に入る職人さんにとって、確実に手元に資材が届くことはなによりの安心なのです。また、当社配送員も職人さんと会話ができるのも大きい。そして調色。実はこの道筋こそ、修業時代の塗料メーカーから得たもの。その名の通り、当社でペンキの色を調整する作業を指します。数多ある塗料を在庫することは難しく、納期遅れがあれば職人さんも困ります。そこで当社内でペンキの色を調整し、かつ自社便でお届けすればリードタイムの短縮につながります。当社としても在庫数が減り、その分の粗利が確保できるメリットがあるのです」と声が弾む。「経営計画書には中期事業計画も入れており、会社の数字も共有込み。ゆえに調色作業がもたらす粗利のメリット含め、どの社員も本書を活用してくれています。調色での日本でいちばんを目指していて、たいへんさもありますが、社員のおかげでまわっています。社員との会話は欠かせません」とほほ笑む。

発信することこそ、いまここにあり

「新卒採用の合同説明会、学生訪問ゼロを経て、現在は理念に共感をして入社を決めてくれる学生が増えてきました。ハローワークさんとのコミュニケーションを絶やさないこと、大東文化大学で講義の機会をいただくなど情報発信の大切さを感じています」と、窓の外に目を向け、「最近、学生からこのような質問も受けました。塗料業界はSDGs をどう捉えるのかと。確かにその通りで、塗料は進歩をしていて機能性をもったものも出てきています。業界にも進歩があるのですが、これを発信しないと誤ったイメージが先行して、若い人たちが集まらなくなってしまう。私たちの世代で情報発信をしなければと考えています」。「また、市場にも可能性ありです。米国はDIY 市場が大きく、たとえば部屋を持った子供にプレゼントをする最初の道具が部屋のペイント用具なのです。日本もこのコロナ禍で、DIY 需要が倍増しました。業界へ、市場へと情報発信をし続け、新たな市場を創ります」と清水氏の歩みの意気が場を彩った。

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