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経営者Q&A

退職願いで辞めても不当解雇?(2003年8月)

Q

自己退職した社員から不当解雇だと訴えられました。

A

以前からトラブルの多い社員でしたが大目にみていたところ、今回は他の社員への暴力行為になりましたので、放置できず「こんなことじゃ困る。今後どうするかよく考えてくれ」と言って帰したら、そのまま出社しなくなり、数日後退職願を出してきたのです。
それを受理して一件落着と思っていたら3カ月もたってから裁判所から「仮処分申立てがあった」といって呼出状がきたのです。
申立書を読むと「社長に脅かされて無理やり退職願いを書かされたから無効だ。未払いの給料を支払え」ということなのです。
私が温情から懲戒解雇にしなかったのを逆手にとられた思いです。

Q

業務日誌など、これまでのトラブルのような記録はありますか。また本人の始末書は。

A

そのようなものはとくにありません。和気あいあいがモットーですから。

Q

今回の件で始末書は? 関係者の報告書は?

A

それもとっていません。

Q

まず報告書などの正確な資料を作成することから始めましょう。裁判はとにかく証拠主義ですから。
それに会社ではどうしようもない社員だったと思っていても甘く見ることは危険です。
裁判官は中小企業の実態を知りませんし、そのうえ中小企業は商法の決まりどおり会社を運営していませんから、ただ法律を守っていない所だという先入観だけを持っていることが多いのです。
だから「弱い立場の労働者」からの申立だということで、へんな正義感からその言い分をとかくうのみにしやすいのです。

A

えー! あんなひどい社員の言うことをですか。

Q

そうなのです。経営者がひどいと思う社員だからこそ、いろいろ裏の能力にたけていて、自分に有利に話を持っていくのがうまいし、裁判官としてはそれを中立の立場で「公平に」聞くわけですから、こちらが安易にわかってくれるだろうと思って気を抜くと予想外の結論を出されてしまうのです。これに対処するには徹底して正確な事実を出していくしかないのです。それでも裁判になったから言い出したこじつけだの歪曲だのとさんざん反論されるのです。
温情は温情で結構なのですが、今後社員のトラブルについてはその都度その事実を、日時、場所、関係者、事件内容など正確に業務日誌などに記録し、本人からは一筆でもいいから始末書を必ず取っておくというきちんとしたシステムを作っておかれることをお勧めします。

原口紘一(三多摩支部)
弁護士、原口法律事務所
TEL 03-3361-9633

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