人材育成は経営者の最重要責務(2004年2月)
将来の幹部候補にと大卒3名を採用しましたが、3年経たずに3人とも辞めてしまいました。何とも複雑な割り切れない気持ちです。
その事実を失敗と見ず、貴重な学習と見るべきで、「今の若者の気持ちはわからない」と、それで新規人材の採用を断念すべきではないでしょう。冷静に経過をレビューして、なぜ定着させ得なかったか要因を探り、対応策を整えて再挑戦すべきです。
自分としてはかなり気を使って給与面や仕事面で高卒者とは格差をつけて大卒者にふさわしい待遇をしたつもりですが。
大卒者でも企業のことはまったく未経験の新人です。社長だけでなく、組織全体で新人を定着させるバックアップ体制が必要です。まず幹部社員の人々と会社の永続的発展のため将来の幹部候補を育成してゆく必要性について十分に話し合い、認識を共有化しておくことが大切です。そのうえで教育指導の計画や責任分担はもとより、新人のメンタル面での相談に乗ってやれる人も公式に決定しておくなどキメの細かい対応に心がけるべきです。
上司となる管理者にはどのように指導させるべきでしょうか。
新人に毎日日誌を書かせて、その日誌を中心に上下対話を繰り返して「報・連・相」の習慣づくりをするとともに、指導、激励と時には褒めるなどを織り交ぜてビジネスライフにスムーズに慣れさせることもよいと思います。
最近部下指導の基本として「ビジネスコーチング」という手法が効果的であると聞きましたが。
部下の指導には「上司が鬼にならなければ部下は動かない」という説と「仕事のやりがいや楽しさを気づかせれば、部下は自ら動く」という説があります。ビジネスコーチングは後者に属する考え方で、部下との有力なコミュニケーションツールとして90年代のアメリカで体系化され、日本でもかなり普及してきました。中小企業で取り入れる場合は、経営者がまずこの指導法を外部で習得し、その後に経営者が講師として社内に普及指導してゆくことが効果的です。
当社は独自の技術力で、厳しい中でも業績を維持しています。この業績を将来とも維持発展させるためにも次代を担う質の高い人材が必要と考えています。どのように充実させていけばよいのでしょうか。
人材は企業にとっては財務や顧客、業務プロセスと比肩すべき重要度を持つ経営資源です。経営者は思いつきでなく、長期的、戦略的な取り組みで人材を育成する責任があります。ただし口で唱えているだけでは人材は何年経っても充実されないでしょう。人材の育成・充実の戦略を実現するためには「バランススコアカード」などの手法を学習して駆使することにより実現性をより高くすることができます。
加藤奏治(練馬支部)
(有)加藤改善相談室 中小企業診断士
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