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経営者Q&A

最低資本金制度撤廃と1円会社(2005年8月)

Q

新会社法では最低資本金制度が撤廃されるそうですが、どういった影響がありますか。

A

新会社法では、株式会社の1000万円、有限会社の300万円といった最低限準備しなければならない払込資本のハードルが取っ払われ、小資本で会社設立が可能となります。そういった意味では起業が促進され、経済の活性化が期待されます。半面、財務基盤の脆弱な、形だけの法人(実態は個人事業!)が多数出現する点で諸刃の剣にもなりかねないという危惧があります。

Q

とはいえすでにいわゆる1円会社なるものが相当数あるようですが。

A

平成15年2月1日から施行されている新事業創出促進法のもとで、実際に多くの1円設立がなされています。例えば、自家用車を現物出資し、適正な査定額であれば資本として認められるので、自己資金がゼロでも(登記費用ぐらいは必要ですが)会社ができてしまうわけです。しかし、法律の上では歯止めがあり、現行では5年間で最低資本金(前述の1000万円・300万円)まで持っていかなければ、解散となってしまいます。

Q

5年間での増資は、大変ではないですか。

A

例えば個人から法人成りしたような確認有限会社の場合、もともと資本調達能力がないわけですから、確かに大変でしょう。設立後の試算表を見れば、役員借入金が大幅に膨らんでいるケースが多々見受けられます。そうした会社の場合DES(デッド・エクイティ・スワップ)を使って、会社債務(社長からの借入金)を資本金に振り替える手法も有効です。

Q

最低資本金制度がなくなれば、資本金はいくらでもよいということになるので、既存の1円会社も5年期限の増資の必要はなくなるのではないですか。

A

定款に「解散事由」が記載してあるので、そのままではだめです。が、新会社法施行後に定款変更して、当該記載事項を削除してしまえば、増資しなくても存続することが可能となります。余談ですが、既存の株式会社の中でも、欠損填補等のための減資手続きが活発化するかもしれません。

Q

新会社法のもとでは、債権者保護の理念はどう担保されるのでしょうか。

A

最低資本金制度に代えて、物的担保として配当制限を課すことで、債権者保護を図ろうとしています。具体的には純資産額が300万円未満の会社では配当ができないこととされています。また、会計参与制度の導入も中小企業の計算書類の信頼性を高める意味では、人的担保として債権者保護に寄与するものと期待されています。いずれにせよ、1円会社制度導入以降、新会社法がそれを追認してゆく流れの中で、従来の個人・法人という区分とは別に、株式譲渡制限の有無を分岐点として、今後会社の経済実態や機関設計にますます乖離が見られてゆくと思われます。

加藤 一志(杉並支部)
翼総合パートナー
監査法人ベリタス代表社員
http://veritas.or.jp/
http://www.kato-co.jp/

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