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経営者Q&A

食品企業の社会的責任(2007年5月)

Q

またしても、食品有名企業の全品回収事故がありました……

A

そうですね。「事故」といえるかどうかは別として、洋菓子に消費期限を1日過ぎた牛乳を使っていたことが発覚し、営業停止に追い込まれ、最終的に社長の引責辞任に至りました。中毒を発生していないのに、という同情論もある様ですが、これも企業を取り巻く環境の変化と考えれば、適切な対応が取れなかったという責は負わねばならないのでしょうね。

Q

「なぜ食品企業では、このような事故が後を絶たないのでしょうか

A

今回の当事者であるF社はISO9000を導入していたようですが、もちろんこのシステムで、期限切れ原料の使用や記録改ざんをしてもよいとは教えていません。この場合は適正な原料の入荷まで生産を中止することが、システムの判断になる筈です。一方、現場管理者はその牛乳を使わず、生産中止する損失と、使って生産した場合のリスクの対比に迫られたのでしょう。そして当面の損失回避を優先してしまったというのが、今回の実情であったと思います。或いは想像で物を云ってはいけませんが、管理者に過去にその経験があれば、案外気楽に決定を下したのかも知れません。

Q

この会社は大手製パン業の指導で、新しい管理方式を導入し、再出発する様ですが

A

そうですね。それは「AIB(American Institution of Baking)食品安全システム」といいます。AIBは製パン技術の研究と技術者の教育、育成を行っている機関ですが、会員企業の食品安全衛生管理を支援するため、食品工場・倉庫の食品安全衛生管理を指導及び監査するフードセーフティ事業も行っており、今日では米国のみならず、世界中に拠点を拡大しています。日本でも、社団法人日本パン技術研究所がAIBのライセンスを受け入れて、教育指導と監査業務を開始し、現在では製パン業界以外にも乳製品、菓子など多くの業界に導入されております。米国発のシステムでは、この他にも有名なHACCPシステムがあり、この方はわが国では「総合衛生管理製造過程」として食品衛生法の一部に組み込まれて普及のための国の支援が行われています。

Q

それでは、日本における食品安全衛生の確保には、これらの管理システムの普及に懸かっていると考えていいのでしょうか

A

これらの管理システムの導入によって食品企業の安全衛生管理が促進されることは考えられますが、忘れてはならないことは、管理システムを社内に導入(認証を受ける)する事は、そのシステムを運用することにより、自社の管理レベルを向上させる事が、目的であり、導入する事自体が目的ではないという事です。これを履き違えると折角のシステムも役に立たないのです。
管理システムを効果あるものにするには、社内にしっかりとした「経営理念」を確立することの必要性を強く感じます。食品企業としての社会的責任を自覚し、お客様のために「やるべきこと」「やってはいけないこと」を明確に峻別する考え方を確立し、社内全体の共通認識を持つ事が必要です。このような経営理念に裏打ちされてこそ、優れたシステムの手法が効果を発揮するものであり、導入したから安心というわけには行かないのです

加藤 奏治(練馬支部)
(有)加藤改善相談室
中小企業診断士
TEL.03‐3925‐6811

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