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経営者Q&A

勤務時間中の私用メール使用について(2008年1月)

Q

社員が勤務時間中、私用メールを頻繁にやっているようですが、これを取り締まる方法はどんなものがあるでしょうか。

A

勤務時間中、会社のパソコンを使用して私的メールの使用をすることで業務に支障が生じることもあり、他方、私用での使用は避けられない実情もあります。
この問題を整理すると、(1)私用メールの使用は会社が許可しない場合は、一般的には「会社施設の不正使用」や、「職務専念義務違反」に当たる。(2)これを禁止行為とし、懲戒処分の対象とするには、就業規則の定めと会社の方針の事前の周知が不可欠です。(3)禁止したからといって、絶対的に禁止し、わずかの逸脱も懲戒の対象することはできず、処分できるのは甚だしい場合に限られる、ということです。実際の裁判例も同様の傾向です。
この問題は実態として黙認されているという企業も多い実情ですが、懲戒処分の可否については、禁止の趣旨の注意指導が徹底されていたか、不意打ち的処分に当たらないかといった点が問題になり、黙認されていたような状況下では現実に業務に支障が生じている事実や、職務専念義務違反が目に余るなどの事実があってそれに対する注意、指導の事実が認められないとメール使用だけを理由にした処分は通りにくいと思われます。また、処分する場合も、注意・指導から始めて、譴責など軽い処分から検討するのが妥当です。
私的使用をチェックするために社内メールを会社が調査することについても、パソコンやメールソフトは会社の物品を使用許可しているものですから、社員には本来は私的な使用権限はないものですが、それでも、いきなり無断で調査するのはプライバシー侵害、人格権侵害のおそれがあります。しかし、雇用契約上、従業員は企業秩序の維持に協力する義務があり、企業秩序維持のために必要な場合に一定範囲で従業員の権利が制約されることは合法です。メールは、送信時刻が記録されるので、就業時間外や休憩時間中のみ使用するルールとし、その範囲でときどきチェックすることや、始業前、始業後の私用メール使用時間は残業時間として認めない(タイムカード打刻後にのみ使用すること)というルールを適用することも必要です。裁判例でも、メールは、システム管理者が適宜監視しながら保守を行っているので、高度なプライバシー保護は期待できず、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合など例外的な場合にかぎり、プライバシーの侵害になるとしています。
なお、厚生労働省の「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(平成12年12月20日)およびその解説についても参照してください。

高下 謹壱(江東支部)
高下謹壱法律事務所 弁護士
TEL.03‐5568‐6655

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