同友会らしいM&Aを(2014年7月)
Q
私には子供もないし、社員にも会社を継げる者はいないので、会社を残すにはM&A しかないと思っているのですが、社員を見捨てるようなことはしたくありません。その場合、どのようなことを考えていけばいいでしょうか。
A
社長は永年、同友会で活躍された方ですから、ぜひ同友会らしいM&A をしていただきたいと思います。
- 一般的にM&A といえば、会社売買の契約締結までは絶対秘密が条件です。話が広がって信用失墜や社員の動揺をきたさないためですが、社員から見ると突然売り飛ばされ、社長一人が得して逃げた、と受け取られがちです。
しかし、会社をたたんでしまうより、継続させるほうが社員の為にはプラスです。 -
そこでまず、M&A を行う目的をしっかり社員に話して納得してもらうことです。その為には、後継社長の人柄を紹介して、社員を安心させること、社員の処遇が悪くならないように、できれば今より改善できる期待がもてるよう、取引条件で努力し、M&A 後の会社の将来ビジョンを社員に示せるようにすることです。
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そのようなM&A にするためには、次のような点が必要でしょう。⑴ まず、業績向上している状態の中でのM&A とすること。⑵ 買い手経営者とのトップ同士の人間的信頼関係をしっかり築くこと。その上で、M&A 後の人事融合、企業文化融合をどう図ってもらえるのかについて、話し合っておくこと。⑶ 会社の経営はすべて透明化しておくこと。社長貸付金や仮払金など私的なものは整理しておくこと。⑷ 自社の評価を思い入れなく客観的に把握しておくこと。
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以上のような段取りを踏んだ上で、いよいよ本決まりになった際、どの時点で社員に話をするかということが大事になります。すべてが決まってしまってからだと前述のように社員から不信を買います。しかし、まだ検討中の段階で「社員にも相談して決めよう」というのは失敗する危険性が大きい。社長に少しでも不安や迷いがあれば、社員はその部分だけを増幅してしまうものです。そこで、買手経営者の人柄もわかり、人間的信頼関係も十分形成され「この人なら社員達を大切にしてくれる」という確信が持て、「この人に譲ろう」と決断できた段階で話をするのが良いと思います。その際、買手経営者を社員に紹介し、将来の会社ビジョンなどを話して安心させた後、売買契約書調印という運びにすることが最も良いと思います。
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最後に、M&A 後の自分自身の身の処し方についてですが、業務引継などの為1 年間位、代表権のない会長職などで残るよう頼まれることもあります。そのほか、今後の生活が安定できるよう、しっかりした見通しを立てて株式譲渡代金や退職慰労金などとして支払ってもらうことが重要です。また、銀行の個人保証の解消についても、しっかり約束しておくことです。
原口 紘一(三多摩支部)
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