入社前研修の賃金と社会保険(2016年1月)
Q
採用内定者が円滑に業務に取り組めるように入社前研修を10日間ほど行いたいのですが、賃金や社会保険加入など留意することがありますか?
A
意欲をもって入社できるように内定者研修は大事です。しかし入社前ですから、内定者に研修を義務付けるのであれば、事前に内定者の同意を得るか採用内定通知書等に研修参
加を明示しておくことが必要になります。
同意の書式は、研修の目的・内容・日時・場所・研修手当(賃金)などを記載した通知書に出欠を自署で確認したものなどでよいでしょう。
なお、入社前研修が内定者の学業等を阻害しないようにする必要があります。また、研修に同意をしなかった内定者に対して内定取消しや不利益な取扱いをすることは許されません。
Q
研修手当(賃金)の支払いは?
A
研修中の内定者は「労働者」に該当するか否かが問題になります。入社前の研修であっても、「使用者の命令により参加を強制されている」「研修に参加しなければ業務遂行に支障が生じる」などの場合、研修への参加時間は「労働時間」となりますので、賃金の支払いが必要です。
研修中の賃金は、必ずしも入社時初任給の額を時間割・日割して支払う必要はなく、一律に研修手当◯◯円とすることもできますが、最低賃金額(東京都地域別最低賃金:時間額907 円)以上にする必要があります。
Q
研修中のケガや社会保険加入は?
A
上記のように研修参加が強制されている内定者は、「労働者」性があると考えられ、研修中のケガについては原則、通勤災害・労災保険が適用されます。この労災保険料については、労働保険年度更新の労災賃金総額にアルバイト等臨時労働者の賃金として加算し、申告をします。
ただし、研修が自由参加の場合やマナー研修・社会人研修など業務との関係性が薄い一般研修の場合では、労災の適用は難しいでしょう。また、労災が適用されない場合であっても、社内での事故に対しては会社が安全配慮義務を負うことになりますので、賠償責任保険への加入の検討を含めて留意が必要です。
なお、入社前から実習等の研修を行い、その後引き続き勤務する場合は、研修開始日が入社日となり、その日から社会保険等に加入することになります。例えば、3 月16 日から実習等の研修が始まり、引き続き4 月入社を迎える場合は3 月16 日が社会保険等の加入日となります。パートタイムや試用(研修)期間中であっても、雇用保険は、週20 時間以上勤務かつ31 日以上雇用見込みの場合は加入しなければなりません。また健康保険・厚生年金保険は、所定勤務時間と所定勤務日数が正社員の4分の3以上(例えば、1日6 時間かつ月15 日勤務)の場合は加入しなければなりません。
藤浦 隆則(江戸川支部)
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