商業登記・相続についての最近の問題点(2017年4月)
Q
最近、株式会社の登記をするときに、株主名簿が必要になったと聞きましたが、本当 ですか?
A
平成28 年10 月1 日以降の株式会社の登記の申請にあたっては、虚偽の内容の株主総会議事録等を元に、真実でない商業登記がされ法人格が悪用されるのを防止するため、添付書面として、「株主リスト」が必要となる場合があります。
※「株主リスト」が必要となる場合
「登記すべき事項」につき「株主総会の決議」または「株主全員の同意」を要する場合
・取締役・監査役・代表取締役等を単に辞任するだけのときは、「株主総会の決議」等を必要としないので、「株主リスト」は不要。
・株式会社・投資法人・特定目的会社以外の法人(例えば、特例有限会社)は不要。
・平成28年10月1日前に、株主総会が行われた場合でも、平成28年10月1日以降に登記申請するときは、「株主リスト」が必要。
※「株主リスト」の内容
例えば、「登記すべき事項」につき「株主総会の決議」を要する場合は、「議決権数上位10 名の株主」「議決権割合が3 分の2に達するまでの株主」いずれか少ない方の株主について、「株主の氏名又は名称」「住所」「株式数」「議決権数」「議決権割合」を代表者が証明する方法により提出する。
Q
昨年末、相続について、重要な判例がだされ たということですが、どのような内容ですか?
A
「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、全相続人の合意がなくても、遺産分割の対象となる。」という平成28 年12 月19 日の最高裁判所大法廷決定です。
この決定により、従来の判例が変更されました。
従来の判例では、「全相続人の合意がなければ、預貯金は可分債権であって、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、遺産分割の対象とはならない。」とされていました。
もっとも、実務では、相続人全員で「遺産分割協議書」を作成し、「遺産分割協議書」の中で、預貯金を遺産分割の対象として扱っています。
今回の決定の事案(※)は、預貯金を遺産分割の対象としなければ、相続人間に不公平が生ずる例でした。
※およそ次のような事案です。
相続人 めいA、めいB(法定相続分 2 分の1 ずつ)
①めいA に、被相続人(故人)が、5500 万円生前贈与
②遺産 預貯金 4000 万円
従来の判例だと、預貯金はそれぞれ当然分割され、めいA 計7500 万円、めいB 計2000 万円となる。
今回の決定により、めいB が、場合によっては、遺産 4000 万円を取得することも可能となり、不公平が是正される。
ただ、遺産分割の手続きが終わるまでは、原則、相続人が個別に金融機関から預貯金を引き出せなくなり、故人の預貯金を生前から生活費などに充てていた人には、深刻な問題が生じる。この場合は、家裁の判断で一定額の払い戻しを認めてもらう仮処分を活用すべきでしょう。
小西 明夫(新宿支部)
小西司法書士事務所
司法書士・行政書士
TEL.03-3357-8556
FAX.03-3357-8773
E-mail : fighters@athena.ocn.ne.jp