事業承継の選択肢のひとつM&A売却準備の留意点と企業価値の考え方(2018年12月)
私の次は長年苦楽を共にしてきた10歳年下の専務に事業を承継する予定でやってきましたが、先日、進行性の癌で、発見されてから6ヵ月で急逝してしまいました。親族、社内から承継に適切な人材はみあたりません。そこで、最近よく聞くようになりました企業売却、M&Aという選択肢を考えています。どのような点に留意して準備を進めたらよいでしょうか。
現在は、中小企業に特化して、売り手と買い手をマッチングさせるM&A のコンサルティング機関なり会社が実績を上げつつあります。したがって、先ずはこうした専門機関なり会社に相談することをお薦めします。公の機関としては東京商工会議所が相談窓口を開設していますので先ずはここで中小企業のM & A 全般について情報を収集することが良いと思います。
会社を売るということになりますと、当然会社の業績、会社の財産がどのような状況なのかが問われると思いますが、この点での考えておくべきことはありますか。
その通りですね。売り手の意向としては、一つには何と言っても少しでも高く売りたい、二つには、雇用の確保を続けて欲しい、そして三つには、利害関係者(株主、仕入先、顧客等)の納得が得られる取引であってほしい、こんなところが共通している売り手側の意向です。そして、何といっても「いくらで売れるか」が最も大きな関心事と言っていいでしょう。
なるほど、そうしますと、こうした売り手側の意向を受け入れてくれるようなM&A取引に持っていくにはどのように準備したらいいのでしょうか。
そうですね、計画的に進めることが可能ならば、1 年から2 年かけて現事業のブラッシュアップ-収益構造の改善と利益最大化を目指す、同時に貸借対照表の改善を意識的に進め資産負債構造の健全化を進める、この二つの取り組みを行うことを通じた企業価値向上を図ることだと思います。特に利益最大化を目指すことが重要です。現実の中小企業のM&A市場では直近を含む過去3 期間程度の利益の水準が売却価格に大きな影響を与えています。
そうですか、ところで今述べられた企業価値とはどんなものなのでしょうか。
事業を通じて創出されるキャッシュフローと資産負債の内容と純資産の合計というように考えられます。そして、M&Aにおける企業価値評価には、「事業価値」「企業価値」「株主価値」という三つの評価があります。それぞれの算出方法はちょっと専門的なのでここでは省略しますが、各企業価値と対応するM&Aの一般的な形態について紹介しておきます。
区分:事業価値/事業から創出される価値
考え方:純資産価値の他、のれん、無形資産、知的財産価値等を含む。
M&Aの形態:事業譲渡,会社分割
区分:企業価値
考え方:事業価値に事業外資産(遊休資産等)を加えた価値。
M&Aの形態:合併
区分:株主価値
考え方:企業価値から有利子負債等の他人資本を控除した価値。株主に帰属する考えられる価値。
M&Aの形態:株式譲渡
渡辺 正幸(豊島支部)
有限会社 彩経営コンサルタント事務所
中小企業診断士・企業再生コンサルタント
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