経営改善計画書」とは何か?(2001年12月)
金融機関のいう「経営改善計画書」とは何ですか。
金融機関から「経営改善計画書」の提出を要請された、との声が多くなっています。それも、返済をキッチリ実行していても要請が行われているようです。金融監督庁の「金融検査マニュアル」の運用で、取引先中小企業に対する格付けをより厳しくせざるを得なくなり、「金融検査マニュアル」のいう債務者区分と債権分類による画一的格付けを、中小企業の実態を考慮したものにするとの意向の表れです。こうすることによって画一的格付けを少しでも排除できるなら、金融機関としても「貸し倒れ引当」を少なくすることができ、それはそれで金融機関の「経営の健全性」評価につながることになるわけです。「経営改善計画書」なるものの提出要請はこうした現在の金融行政を背景としてでてきています。したがって、条件によってその判断は違ってきますが、多くの中小企業の場合は提出せざるを得ないのではないでしょうか。特に、地域金融機関または協同組織金融機関は、現在の金融行政の下では大手行との関係でみると相対的に弱い立場にあるわけですから、要請に対しては対応をしていくことが必要だと思います。
それでは、この「経営改善計画書」を策定するポイントはどのようなことでしょうか。
金融機関が「経営改善計画書」の提出を要請してくるのは、収益構造が悪化してきた場合や借入金の返済条件等を余儀なくされる状況になったときです。したがって、収益構造の改善、財務内容の安定、といった事業の抜本的再構築の道筋を示すことが求められます。このような検討の場合、
(1)徹底したコスト削減により乗り切ることができるか、(2)事業を縮小して乗り切るか、
(3)不採算部門は切り捨て、経営資源を強みとする部門に集中し拡大を図るのか、事業の存続再建をどのように進めるかの方向を決めることが大前提です。
また、思い当たる理由がなくても提出要請が行われてきていますが、これも機会と考え、あらためて事業そのものを見直す気持ちで対処したらどうでしょうか。検討して損はないように思います。
どのようなことから始めたらよいのでしょうか。
先ずは、応急措置として資金流失(赤字)を止める対策を具体化しなければなりません。同時に、収益構造そのものの改善策を具体化することです。そのために、主要商品・製品、主要部門ごとの収益構造を抜本的に検討すること。ときには、創業以来の主要部門であっても、思い切って切り捨てることで収益構造が好転する場合もあります。
次に、会社および個人の資産内容を総合的に検討し、借入金圧縮を検討することが必要です。借入金の返済負担が減少すれば、事業再構築計画も立てやすくなります。また、こうした検討を通じ特定の融資の枠拡大について可能性を具体的に検討することができます。
渡辺 正幸(豊島支部)
(株)第一経理・経営相談室長 中小企業診断士・経営士
TEL 03-3980-9101