ISO9000による人材育成(2001年10月)
コンビニチェーンに日配食品を納入するベンダーで、40数名の食品製造業です。最近本部からISO9000を取得するよう要請を受けております。どのように対処すればよいのでしょうか。
コンビニの本部が具体的にどのような観点からISO9000取得を要望するのかわかりませんが、推察すれば貴社も本部も一体となって顧客満足を差し上げる企業でなければなりません。その前提で、協力して継続的に改善を行いながら高いお客様満足を得るためにはISOが最適なツールであるという考えから要請があったものと思います。
考え方はわかりますが、ISOの取得には準備活動などにかなりの時間と労力がかかると聞いております。正直に言ってそれだけの時間と人を掛けることはかなり難しい現状です。
企業にとって大なり小なり、その問題に突き当たりますし、もっともなご心配です。ただここで考えたいのは、会社は将来ともこのままでよいかということです。規模の大小に関わらず、組織がしんの通った頑強な体質を備えていないと21世紀に生き残っていくことが困難な時代です。
そのような強い組織を作り上げるために、ISO9000は品質哲学と共に多くの管理手法を包含しており、むしろ比較的管理手法が手薄な中小企業がこの手法を自分のものとすることによって比較的短時間に経営体質を強化することが可能だと思います。
スタッフがいないという問題ですが、これは経営者の決心に関係します。自らが先頭に立つ覚悟をし、ごく少数の幹部に決心を打ち明け、心を込めて企業の将来のために敢えて時間外の協力を要請するところからはじめます。要は社長の心を自分の心にしてもらうことがポイントとなります。
そのように努力して認証取得を果たしたとして、私たちの企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ISO9000はマネジメントシステムの規格です。すなわちすべての業務プロセスは計画(P)し、実行(D)し、検証(C)し、改善(A)する、という考え方で体系づけられています。したがってこの考え方で忠実に業務を遂行していくことによって仕事の出来栄え、確実性を目に見えて上昇させることができるのです。
さらに私が特記したいのは、ISOの導入過程および導入後の運用の過程で、社内の人材育成、または発掘が期せずして行われるという事実です。例えば後継者の息子さんを、不安を覚えながら責任者に据えた社長さんがISOに取り組む中で息子さんの成長ぶりに目を見張った話、大卒後3年程度の若い社員が重責に耐えて認証取得を果たし、強いリーダーシップを持つ中堅社員に成長した話、若い工場長が社長とともに3カ月間休日返上で頑張って、4カ月という短期間で認証取得を果たした例などエネルギーの燃焼を伴う中で人材が発掘され、育成されてゆく過程をつぶさに目にしています。
加藤 奏治(練馬支部)
加藤改善相談室 中小企業診断士
TEL 03-3925-6811