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経営者Q&A

回収不能債権の税務上の処理は?(2001年6月)

Q

数年にわたり回収できないと思われる債権があるのですが、税務上の処理方法を教えてください。

A

相手先企業が資金繰りに窮し支払いを滞らせている場合、債権者側の企業は、回収できない債権に対しても税金を払っていることになるわけですから、その影響は大きいものがあります。特にこの数年は回収困難な不良債権を抱えていらっしゃる企業も多いのではないでしょうか。

税法では、このような場合、引当金の設定と、貸倒損失の計上が用意されています。貸倒損失の計上は「完全に回収が不能であることが客観的に確定」されなければ認められません。回収が滞ったというだけで損金処理をしてしまうと、寄付金(贈与)とされてしまうこともあります。寄付金とされると、損金不算入でさらに税金がかかることになるので、慎重に処理しないといけません。そこで順番としては、引き当て→貸し倒れという処理になります。

引当金は、一括して設定することができるほか、個別の債権を評価して設定することができます。個別評価の対象は、
1) 会社更生法などにより弁済猶予となってしまった場合
2) 債務者から事実上債権回収が困難と認められる場合
3) 破産などを申し立てられた場合
などであり、一定の限度で引き当てが認められて
います。これらは以下の貸し倒れ処理が非常に認められにくいことから、早期に損金処理できるように配慮されたものといえます。

貸し倒れの処理としては
1) 相手企業が破産した場合のように、法律上債権が消滅した場合
2) 相手方の資産状況から見て債権の全額(「全額」が大事です)が明らかに回収不能と認められる場合
3) その債権が会社の営業債権(売掛金ですね)であり、取引関係が1年以上停止したような場合、帳簿価格を1円として残りを損金処理した場合
などに認められます。実際の実務上は、2),3)の処理を行うことは(非常に)難しい場合が多いようです。

貴社の場合も債権の状況を判断して、回収できないと判断した場合には早急に処理した方がいいでしょう。それによって損金処理をした会計期間は税負担が軽減されますし、以後、回収にかかる経費の軽減にもつながります。何より精神衛生上良い場合があります。また、今後は、日常の業務においても、債権回収業務に付随して回収不可能かどうかの査定をしていくことも、必要ではないでしょうか。

鶴田会計事務所  鶴田 勝巳(三多摩支部)
TEL 0426-67-0930

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