企業存続は人を生かす経営の実践 ~新卒採用、そして共育~
株式会社ソアーシステム 大脇 耕司 氏(台東支部)
株式会社ソアーシステム (台東支部)
代表取締役
大脇 耕司 氏
【会社概要】
創 業 1981年
資 本 金 1200万円
年 商 3億8000万円
(2020年 3月期)
社 員 数 51名
事業内容 医療・通信・画像・サーバ、インフラ機器などのシステムの受託開発
住 所 東京都新宿区揚場町2-14新陽ビル3F
飯田橋駅近くに本社を構える㈱ソアーシステムの大脇耕司さんを訪問した。ソアーシステムは、ソフトウエア開発の会社で、自社に持ち帰って開発する一括受託スタイルを長年続け、高い評価の会社である。
大脇さんは、高知県で高校までの青春時代を過ごした。横浜国立大学工学部電気工学科在学中、塾講師をはじめ様々なアルバイトをして人生経験を積んだ。「卒業までに七年間かかってしまいました」と苦笑い。
バブルも陰りを見せ始めた大学最終年、いよいよ就職を考えなければと就職活動を始めたが、活動を始めてすぐ、研究室対抗のソフトボール大会で足を骨折してしまい三ヵ月入院。就職活動がほとんどできなくなってしまった。そして卒業間近の12月頃、研究室の先生に泣きつき紹介してもらったのが、㈱ソアーシステムであった。創業社長が研究室の先輩というご縁もあり、この会社に就職が決まる。そのころの大脇さんは中小企業のことを良く知らず、いいイメージが無かったが、とにかく働かなければ、3年頑張ろう、という気持ちで入社する。社長の方針が、自分たちでルールをつくれということもあり、社員が主役になれる会社かなと思ったことも入社の理由だったと話す。
入社後は、「遅れを取った入社なので人一倍努力を」と思っていたが、わからないことを人に聞けず、一人で黙々と勉強する日々を送る。ところがある日、『仕事のやり方が間違っているよ。よい資質を持っているのに伸びないのは一人で抱えているからだ。何でも人に相談した方がいい』という先輩からの言葉で目が覚めました、と語る。30歳のころ、20歳から経験を積んでいる先輩には技術力で追いつけないと実感、自分ができることは何かを考え、社内の情報の要になるような立ち位置を目指すこととした。その頃から、とにかく様々な仕事に関わり、創業社長からも「外でもたくさんコネクションをつくれ」と言われるようになる。その後、創業社長が辞めるタイミングで「お前が社長をやれ」と言われ驚いた。2009年に取締役、2010年に代表取締役に就任した。
リーマンショックのさなか、大脇さんの激動の経営が始まった。上場会社基準での数値管理が必須となったが、創業社長時代には、経営に関する数字や考え方に触れていなかったため、技術者あがりの大脇さんにはわからないことも多かった。このことを誰にも相談にできず一人で悩むことになる。
社長の悩む姿を見て、社員が徐々に離脱する。そんなある日、同友会からのFAXDMに気づいた。そこには自分が悩んでいることがすべて書いてあった。「うまくいかないことがある。しかし経営者を辞めることもできない」その言葉を見た瞬間「行ってみよう」と台東支部の例会に参加した。㈱シーキューブソフトの佐々木喜興社長の経営体験報告だった。赤裸々な生の経営体験報告に感動、活発なグループ討論にも驚いた。同時に「経営者の居場所」ができる、導いてくれる先輩もいると思い、その場で入会を決めた。入会後はIT部会にも参加、「飲み会とゴルフは断りません」とハマっていった。
2011年、㈱リアルビジョン(現㈱RVH)のグループ会社となった。リーマンショック以降、採用活動を休止したこともあり、2013年には社員が40人から29人に減ってしまっていた。これではいけないと、同友会の共同求人で採用を再開する。共同求人委員会にも入り、「合同企業説明会」「学校訪問」「経営者と語る会」等、中小企業の魅力を全国の学生に伝える活動を通じ、自社の様々なことを改善した。自社の魅力も話せるようになり、徐々に採用にもつながった。社員数も2021年には51名にまで復活。2016年からは共同求人委員長、2018年からは副代表理事も務めている。
「周りの状況に振り回されず、じっくり情報収集し、失敗しないやり方をつくっていくことが私の役割だと考えています。また、チームでより高いレベルの成果を提供するために、会社の経営状況や数字についてもできる限り透明化して社員と共有するようにしています。10年後も20年後も会社を存続させるためにも、新卒採用を続けることが課題です。多様性に富んだ社員たちがみんなで討論し、意見を出し合える会社でありたいですね」と笑顔が力強い。
趣味はゴルフ、そしてジャズバーで静かに一人飲むこと。特に、ジャズバーでのマスターと会話が楽しいという。出張先でも探して楽しんでいるそうだ。何時間でも孤独を愛しジャズの流れるバーでウイスキーを傾ける大脇さん。大人の粋な男をそこに見た。