若き起業家魂ここにあり! トライ&エラーの10年間、そして...挑戦は続く
株式会社ケイワールド 遠藤和夫 氏(葛飾支部)
株式会社ケイワールド (葛飾支部)
代表取締役
遠藤和夫 氏
住 所:東京都葛飾区小菅2-26-12
設 立:2011 年
資本金:100 万円
社員数:3 名
事業内容:商業写真撮影、広告企画制作、飲食業、レンタルスタジオ
「私で本当にいいのでしょうか?」これが取材に伺った時の遠藤さんの最初の言葉であった。謙虚な人である。
出身は、世田谷区上北沢の生まれ、小学校からは永福町で育った。12年前に祖母と一緒に暮らすために母の実家である葛飾区に家族全員で移った。
遠藤さんが起業したのは2011年、東日本大震災直後の7月、29歳の時である。それまで某大手ファーストフード店の店舗で働いていたが、将来は飲食業で起業したいと漠然と思っていた。「起業するなら今だ」と勢いだけで起業、何をやるかも決めていなかった。目の前にカメラマンの父親がいた。「よし、父親を商品として使っちゃおうと。何という息子でしょうね」と笑う。父は新宿で広告制作・撮影の会社を経営していたが、ネットバブル崩壊後に社長業はむいていないと会社を辞めた。その後はフリーランスのカメラマンとして活躍。今は良きパートナーとして一緒に働いている。
同友会にはその年に墨田支部の川端政子さんに誘われて入会した。「川端さんには感謝です。お金も人脈も仕事もない僕が今何とかやっているのは、同友会でいろいろな経営者
から教えてもらったからです」と振り返る。
創業時に受けた融資で事務所とスタジオを改装、返済に追われながらも、3年目に広告の仕事が入るようになった。そこでワイン輸入会社を手伝うことにした。広告は目に見えない。
モノが見える物販業にあこがれを抱き、「売れる」と錯覚したが思い通りにはいかず、わずか3ヵ月で手を引いた。その時に父親から「何か忘れていないか」と言われ、会社を創った原点を見失っていた自分に気づき、広告業一本に絞った。
5年目、コスプレ専用撮影スタジオを池袋にオープンしたが、開店後5ヵ月売上が無い。そこで企業向けの白い撮影スタジオ「通販スタジオ」に変えて事業を再スタートさせた。遠藤さんはワインにもコスプレにも興味がなかった。好きなものを仕事にしないといけないと痛感した。その後、2017年には亀有に黒のスタジオをオープンし、コンスタントに売り上げを伸ばしていった。
広告・撮影スタジオに加え、第三の柱として念願の飲食業である「Blue The Berry(ブルーザベリー)を亀有に2019年9月にオープンした。この店は葛飾支部会員の大年久美子さんの「つくばブルーベリーゆうファーム」のブルーベリーを使ったブルーベリー専門店である。出店のコンセプトは「地域一番・商品一番」。
その後も遠藤さんの事業展開への意欲は止まらない。2020年10月に亀有におにぎり屋をオープン。しかし2021年1月に閉店した。売れなかった。なぜ売れなかったのか。おにぎりでは差別化が難しく地域一番になれない。何よりも、社員がおにぎりに興味がなかったのだ。その後、ウーバーイーツだけで販売するゴーストレストランとしてクレープ専門店をオープンした。製造場所はブル―ザベリーの店内である。
このコロナ禍での業績はと聞くと、「広告とスタジオは大打撃を受けていますが、ブルーザベリーとクレープは売上を伸ばしています。ブルーザベリーは座席数を少なくプ
チ改装をしてテイクアウトに力を入れています。スタッフ全員ブルーベリーもクレープも大好きなんです。好きなことをやるのが大事ですね。コロナ禍という試練の中で、飲食業
は大変苦労しています。今ある設備を生かしてのゴーストレストランという新しい展開も選択肢の一つだと思います」と語る。様々な事業展開のなかで資金面ではどのようにされ
ていたかと聞くと、「融資を受けるために試算表をしっかり作りました。あとは熱意です。
熱意は必ず通じます」と笑う。
家族はご両親と妹さん。家族全員で事業を応援している。「家族仲がいいんですよ」と照れながら、「社員を雇い、やっと経営者としての責任もできたかな。今年は社内体制
を強化して、基礎づくりの一年だと思っています」。トライ&エラーを繰り返しながらも確実に目指す方向を見つけ、道を固めながら進んでいく。若さという強みだと感じた。
葛飾支部長として着実に支部会員を増やし、今年度新設された「飲食部会」のリーダーとなった。若きリーダーに期待したい。